社会福祉法人風土記<31>沖縄コロニー 上 結核患者ら本土の進んだ治療を求める

2017年1207 福祉新聞編集部
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結核患者はパスポートを手の那覇港から本土へ(『厚生協三十年のあゆみ』1961年から)

 結核はかつて国民病といわれた。死の病とも。求められるは医学と栄養。戦前、本土より結核死亡率が高く、本土防衛のため医療機関を含め焦土と化した沖縄にとって緊急の課題だった。

 

 広く実情を知らせ、療養生活の向上をーー1956(昭和31)年、沖縄本島の中部、金武村(現・金武町)にあった唯一の結核療養所「金武保養院」の患者が「沖縄療友会」を結成した。社会福祉法人「沖縄コロニー」(金城康博・第5代理事長、浦添市)の前身である。副会長として結成に関わって以来半世紀、沖縄の福祉に尽くしたのが山城永盛・第4代理事長(1927~2017)だった=2005年から名誉理事長。

 

山城永盛・第4代理事長

 

 沖縄戦は1945年3月に始まった。工業学校生の彼は「鉄血勤皇隊」(中学生の動員隊)として手りゅう弾を手に敵戦車へ突撃訓練。米軍上陸後、帰宅命令で家へ戻り、山に逃れて九死に一生を得た。焼け野原の那覇で建築事務所を開いたものの、結核で8年間の闘病生活を余儀なくされている。

 

少ないベッド

 

 そのころは本土復帰(72年)まで27年続く「アメリカ世」であった(初めは米軍政府、50年に米民政府へ移行)。お金はドル、本土へ渡るのにパスポート携帯という時代だ。1948年から4年ほど沖縄の結核死亡率は上がり、新患登録数は年間3000人の割で増えていく。

 

 「米兵と家族を感染から守るため」との研究者の見解はともかく、間接統治機関の沖縄民政府(対日平和条約で日本が独立する52年に琉球政府へ改組)を通し48年、海辺に金武保養院が設けられた。

 

 続いて琉球結核研究所(糸満市)など2カ所を立ち上げる。しかし、合わせても300床ほど。「入院期間ひとり半年」のベッド回転制をとり、多くは在宅治療を強いられた。

 

 やや後だが、当時の国立療養所東京病院(清瀬市)の島村喜久治院長(1913~97)が62(昭和37)年、厚生省の派遣で石垣島を視察している。

 

 「米軍はヒドラジドとパス〔いずれも抗結核薬〕だけで治療してストマイ〔抗生物質ストレプトマイシン〕を使わず、BCG〔予防接種ワクチン〕も使わせなかった」「貧しい農家で、病人の農夫は板敷の部屋に寝ていた。かやのような夜具をかけていたが、私たちが声を掛けると、その夜具のあちこちから幼児が3人ほど顔〔を〕出した。これでは沖縄の結核は医学だけでは片付かない。暗澹あんたんとして那覇に帰ってきた」(『厚生協三十年のあゆみ』沖縄県厚生事業協会)

 

 じっとしていられなかった。山城理事長は次のように回想している。「医師から『患者が先頭に立って結核の社会的認知を進めないと問題は解決しないよ』と諭されました。幸い私は治療を受けられたが、多くの人がベッドもなく、貧困の中で死んでいる。はっと我に返りました」(朝日新聞1996年1月3日朝刊)。

 

 少ない医師に代わり活躍したのは、保健所に配された公衆衛生看護婦たち。戦後、高知県で広がった仕組みだ。患者管理票や仲間への慰問を運動の柱に据える療友会へ寄付された石けんなどを手に離島・へき地を回り、療養指導や調査にあたった。その評価は今なお高い。

 

本土の医療を

 

 その中で沖縄療友会は本土の進んだ治療を求めた。米側も結核医の沖縄来訪などに目をつむっていた。が、日本復帰への思いをかぎ取ったのか1958年、「いまのままで十分」と本土委託治療や専門医招へい中止の書簡を琉球政府へ発し、大騒ぎに。金武保養院上空の米軍機騒音に抗議するなど「活動する患者たち」(療友会)はひるまず、署名運動などで書簡を撤回させている。

 

 兵庫沖縄協会(沖縄県人会)を身元引き受け先に、患者11人を初めて船で国立療養所春霞園(兵庫県三田市)へ送り出したのは、その3年後であった。

 

 エピソードを一つ。渡航条件に生活保護の受給があった。療養費ねん出のためだ。日本政府ははねつける。沖縄人(ウチナーンチュ)は本土の人(ヤマトンチュ)を対象にした生活保護法の適用外、と。出発ストップをかける声に山城は言った。「もう船は出ました」。神戸港へ接岸した11人へ「無料患者に」と春霞園より救いの手が伸び、また動き出す。

 

法人評議委員の新垣悦子さん

 

 「口ぐせは『不可能なことはない。努力すること』。手術で肺の半分をとり、肺活量の極度に少ない体をジョギングで鍛え、ブルドーザーのように頑張る人でした」。同コロニー評議員の新垣悦子さんは思い出す。
 以後、84年までに約2800人が海を渡った。

 

沖縄コロニーの本部(浦添市)

 

【横田一】

 

 

 

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