社会福祉法人風土記<31>沖縄コロニー 下 授産からケアへ新たな「ゆいまーる」

2017年1221 福祉新聞編集部
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児童デイサービス「あはちゃ」の大城武和管理者(左)と比嘉哲所長

 戦禍、アメリカ統治、高い失業率…本土と状況が違う。「沖縄は沖縄らしいもの〔福祉、医療、地域対策〕をつくらざるを得ない」。山城永盛・沖縄コロニー名誉理事長(1927~2017)は時にそう口にした。

 

 公衆衛生協会(69年)、ひたむきに頑張る障害者に光をあてた「沖縄コロニー大賞」(1996~2015年)、高校生へ奨学金を贈った社会奉仕団体「佛桑花の会」(1972~2007年)の設立。アジア太平洋障害者の十年・国際NGO沖縄会議(93年)の事務局、アジアの障害者支援と現地訪問ーー事業も一法人の枠を超える発想で展開した。

 

 また、施設のサービス改善をうたう福祉QC実践(84年)や地域まつり、社協などへの職員カンパ「ほほえみ献金」とダイナミックに法人を外へ開いてきた。

 

 「荒れ放題だ」。山城理事長は山形沖縄県人会で耳にした。浦添市にそびえる高さ約150メートルの高地(通称「ハクソー・リッジ」=のこぎり崖)は1945年4~5月、日米両軍が争奪を繰り広げた激戦地。北海道、山形、沖縄の兵士、たくさんの住民が亡くなった。そこにひっそり建つ「前田高地平和之碑」の清掃を職員に呼び掛け、83年から年2回続けている。

 

人骨や不発弾

 

 最初の特養「ありあけの里」(定員110人)は市が提供したその高地の一角にある。老朽化し、来春の完成(全面個室化)を目指し工事が進む。「地中から人骨と不発弾が出てきた。骨は県へ、弾は自衛隊に対応を頼んだ」と當山幸司所長(48)。同じ敷地内にグループである医療法人の経営する「かじまやークリニック」が、さらに道路を挟んで高齢者ケアハウス「ありあけの里」(定員50人)もある。

 

 ケアハウスの比嘉栄治所長(59)=法人事務局長=はため息をついた。「雷鳴を聞くと頭から布団をかぶるおばあさんもいる。米軍の艦砲射撃と重なるんですね。そんな時はベッドを窓際から遠ざけます」。

 

 ところで法人はここ数年、新改築ラッシュだった。2番目の特養「第2ありあけの里」(宮国明美所長、定員110人)は2年前に完成、法人本部や就労継続支援A・B型、障害者支援施設「沖縄コロニーセンター」(佐久川清美所長)などの入るビル=以上浦添市=は昨春、沖縄市にある障害者支援施設「コロニーワークショップ沖縄」=金城忠彦・法人常務理事(60)が所長兼務=も今春終えている。並行するように障害者らの収入源だった「沖縄コロニー印刷所」(沖縄コロニーセンターの前身)や陶芸といった授産事業から撤退した。

 

 「日進月歩の印刷技術は手に余り、ビジネスとしても割に合わなくなってきた。2年前にやめています」と金城常務理事。代わって障害者雇用を継続するため大規模法人のメリットを生かし「コロニーを働く場に」と、いま約20人が児童デイサービスの請求業務、清掃や特養での配膳などをこなす。賃金の支給法など課題はあるが、パートを含め約700人いる職員の仲間に加わりだした。

 

 さらに、新たに担っているのが、2007年にスタートした児童デイサービス。発達支援、放課後デイあわせて本島の中南部で29カ所を運営する。自閉症児が多い。ドッグセラピーを一部導入しているが、在宅・新規事業担当の比嘉哲所長(54)は「こんなに増えるとは…。保育士探しが大変」と語る表情はいくぶん複雑だ。

 

高い子ども貧困率

 

 沖縄の子どもの貧困率は29・9%、厚生労働省のまとめた全国平均13・9%より倍以上高い(『沖縄子どもの貧困白書』かもがわ出版、2017年)。白書編集にあたった沖縄県子ども総合研究所の堀川愛所長(44)は「背景にあるのは保護者のワーキングプアです」。そこに障害が重なれば、苦労は推して知るべしだろう。

 

 一方、認知症のお年寄りは増えるばかり。共通メニューを提供する二つの特養の最高齢は104歳の女性。嚥下力低下に対応するミキサー食を嫌がる人は少なくない。戦中・戦後を必死に生き抜いたお年寄りに食べる楽しみを少しでも長くと、食事摂取改善研究に2010年から取り組んできた。栄養士たちはミキサーにかけた食材を魚、沖縄そばなど元の形にする調理法を工夫。写真(フードピクチャー)で見せ、食欲をうながす。あわせてリハビリの強化を課題にすえる。

 

 「血清アルブミン値は見事に回復します」と上間鈴美・管理栄養士係長(57)。かつて長寿県といわれた沖縄だが、食形態の変化ゆえ、特に男性の平均寿命の後退は激しく、在宅のお年寄り、介護者らを対象に公民館などで栄養講座を開いてもいる。

 

 利用者第一優先を胸に地平を切り開いてきた人間集団は、県内一の多機能法人として、授産からケアへと新たな「ゆいまーる」(沖縄の言葉で「結びつき」「助け合い」)に向けて歩み出した。

 

食事改善チーム。大野理恵さん、上間鈴美さん、上里照美さん、与儀幸子さん(左から)

 

 

【横田一】

 

 

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