社会福祉法人風土記<35> 福島愛育園 上 孤児らの組織的養育を始める

2018年0405 福祉新聞編集部
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法人前に建つ瓜生岩の像

 社会福祉法人「福島愛育園」は福島市の中心から東南に約5キロの同市田沢躑躅ケ森の小高い丘の上にある。丘の斜面を登ると正面玄関手前右に「仁慈隠惕」の石碑と左に瓜生岩の像。法人経営の「あすなろ保育園」入口にも子どもと戯れる瓜生岩の像が訪れる者を迎えてくれる。

 

 仁慈隠惕は創設者・瓜生岩(1829~1897)が中国の孔孟の教えから造語したと伝えられている。大意は「人には皆、他人の不幸を平気で見ているには、耐えられない心がある」で、仁慈隠惕は法人の理念として125年を経た今も受け継がれている。

 

「仁慈隠惕」の石碑

 

 岩は、尊敬と親愛の念を持って「岩子」「岩刀自」「救世の慈母・聖母」とも呼ばれ、福島県が生んだ福祉事業の偉大な先駆者だ。

 

 本紙連載『福祉を創った女性たち』の「菩薩の化身・瓜生岩」(2013年3月18日号から6回)では、官軍と戦う八重はまさに〝会津のジャンヌ・ダルク〟。一方、同じ戦場で負傷兵を手当てし、戦場に置き去りにされた多くの子どもたちを救い出した岩は、〝会津のナイチンゲール〟として描かれた。

 

 「1868(明治元)年8月、官軍は総攻撃をかけ若松城下に迫る。白虎隊の悲劇も起こる。『大変だ。若松さいかんなんね』と岩は、荷車に薬と食物・衣料を積み、身を寄せていた母の実家の旅館山形屋(現喜多方市)から若い衆5、6人と若松城下に向かう。『会津の者か、何をしておる』と官軍に怪しまれたが、『傷の手当をしておえやす』と岩。『誰の許しを得た!』と問われると『けが人の手当に誰の許しも要らねえとおもいやす』と岩は平然と応じた。隊長らしい男に『我らにも負傷者がおる、治療してくれるか』と言われると、『いのちに敵味方はございません』と岩は答え、寝食を忘れ治療にあたった」と岩の人間性に触れている。

 

 戊辰戦争後、山形屋や近隣の農家などの協力を仰ぎ孤児らの養育に追われる日々を過ごす岩は、県内の有力者に呼び掛け、1893(明治26)年2月、福島市内大町到岸寺に法人の起源となる福島鳳鳴会育児部を設立。組織的に孤児らの養育事業を開始する。1897(明治30)年、69歳で惜しまれながら永眠。その後、拠点は市内各地を転々し、名称も福島鳳鳴会育児所、福島鳳鳴会育児院、1908(明治41)年には福島育児院へと改称する。大正時代に入り財団法人となり、1919(大正8)年8月、市内花園町に移転。以来、現在地・田沢躑躅ケ森に移転するまでの43年間は、この花園町が拠点となり、1932(昭和7)年には救護法による救護施設として認可される。

 

 当時の状況は、施設保母として47年間務め、〝本田姉さん〟と慕われた本田はつ(1915~1988)の遺稿集『本田はつ歌日記・父母を訪ねて行く道も』から垣間見ることができる。

 

本田はつ

 

 はつは、高等女学校卒業後、1935(昭和10)年3月に福島県社会事業協会保母養成所を卒業(卒業証書第1号)、同年4月、福島県初の有資格施設保母として福島育児院に採用される。小学4年の時、家に、まだ年端も行かない少女が小間物を売りにやって来て、はつの母が倍以上のお金をあげようとした。ところが、その少女は「お金と売った品物の数が合わないと叱られるから」と断った。「私より貧しくかわいそうな境遇の人たちがいる」と、はつの脳裏に焼き付く。以来、はつは幼い子どもたちのために尽くそうと保母になることを夢みてきたという。

 

 当時、児童は男子23人、女子25人で、職員は後に初代専任園長となる宮﨑作治(1893~1958)と妻・トミ(1894~1963)、炊事1人、洗濯1人に、採用されたばかりの本田はつの5人。子ども部屋は1部屋しかなく、男女一緒の生活、入浴は週2回で男子は作治が、女子は保母のはつとトミが一緒に入り、風呂の入り方なども教えた。朝食は煮麦入りのご飯にみそ汁、たくあん、時々、納豆が付いた。夕食はたまに魚が付くときもあった。保母の部屋はあったが、添い寝、夜尿児起こしなどで自室と子ども部屋を行ったり来たり、毎日が夜勤のようだったという。

 

 やがて太平洋戦争が激化し、社会全体が窮乏生活を強いられるなか、育児院はさらに厳しい環境に置かれていく。

 

【荻原芳明】

 

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