社会福祉法人風土記<46>下関市民生事業助成会 中 「よしみ園」から「なごみの里」へ

2019年0319 福祉新聞編集部
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2015年に設置された開設50周年記念モニュメント(蒲生野)

 1965(昭和40)年9月、精神薄弱者援護施設(現・知的障害者施設)「よしみ園」(定員60人)は、下関市吉見上に開設された。『よしみ史』によると、63年ごろに地場産業である蒲鉾業者が15軒増え、町も活気があったとある。この町中から少し入った安養寺裏手に「よしみ園」はあった。草創期に勤務していた青木啓子さん(77)は当時を振り返る。

 

 「トロ箱いっぱいに入ったアジ、イワシを漁師さんからもらったわ。入所者の作業といえば活版印刷(文撰、植字、印刷)の印刷部があって、吉見の港にある海上自衛隊、水産大学校(前身は釜山水産高校)からいろいろな印刷物の注文がありました。それに園内には田渕建材の支店が置かれて、ブロック作りをしていましたから、子どもたちは原料の重いセメントを担ぐんです。最初は担げなかった子もみんなに負けまいと担げるようになる。できたブロックの運び出し、積み込みはほぼ毎日。結果として身体が丈夫になり精神的にも強くなる。荒っぽいですが療育になりましたね」

 

 「(入所者は)何をするかわからない。だから施設に鍵を掛けろと連絡が入る。でも私たちは鍵なし、出入り自由を通しました。そんなときに入所者の無断外泊、外出が起こりました。祈る気持ちで職員全員で捜しました。列車事故や水にはまったら大変なことになる。最寄りの吉見駅清掃など地域貢献もするうちに、檀家さん、商店街の人、タクシーの運転手さんが助けてくれるようになったんです。地域との関係が深まって、〝お寺(安養寺)の子〟と親しみを込めて呼ばれるようになりました」

 

 青木さんは敗戦の翌年、旧満州(中国東北部)から3歳で引き揚げて来た。

 

 もう1人、子育てしながら働いていた中村美恵子さん(70)は、「『強く、やさしく、明るい人』になるように頑張りますと、朝礼時に大きな声で職員と一緒に唱和してエネルギーの源にして生活し、働くことに一生懸命に取り組んでいました」と述懐する。

 

 入所者はどうだったかを3人に聞く。「印刷班で名刺、年賀状、挨拶状作り。実習は製鋼会社へ」(有井悦子さん・68)。「かまぼこ屋でラベル貼り、天ぷら(薩摩揚げ)の袋詰め、箱詰め作業。好きなのは歌うこと」(河内友枝さん・69)。テーブルの上に国語辞典があった。奥付の刊行年(昭和33年)を見て、「お生まれの年ですね」と話すと、はにかみながらうなずいた。「歌が好きです」とポツリ一言(藤本浩さん・60)。

 

 2003(平成15)年4月、「よしみ園」は「なごみの里」に改称して移転した。主に知的障害者の援護施設だったが、法改正などにより現在は障害者支援施設として幅広い取り組みをしている。

 

 入所者も多様化、重度化、高齢化が進んでいる。年齢幅をみると、特別支援学校を卒業後すぐに来る人と70、80代の人もいる。だから対応も職員の一層の工夫と努力が求められる。現在、入所者92人、通所者25人、グループホーム52人、ワークセンター48人。

 

 生活支援でもある食に関するエピソードを紹介しておきたい。橋本嘉香管理栄養士(54)と調理員の取り組みから。

 

おいしそうなパンが並ぶパンバイキングの様子

 

 「普段の食事以外にみんなで楽しく食べることを考えました。それがパンバイキングです。当日は6種類のパンを調理員さんと一緒に作り、楽しく選びやすいように工夫して並べます。原則は2種類を自由に選んでもらいます。それが喜びや自発性につながります。全職員が誘導、配膳、介助に加わってできる月1回のイベントです。皆さんの笑顔を見ると、すぐに次はと考えてしまいます(笑)」

 

 次に山本千秋支援課長(54)が笑顔で話す。

 

 「入所の人にとっては外出しての買い物が楽しみなのですが、もう一つは3時のおやつに120円のジュース、コーラなどを買えることです。みんな120円を握って、施設内の自動販売機前に並びます。自分で自由に選べる喜びですね。私たちも関わり、使ったお金と残額合わせ、小遣い帳を記入します。全員92人分だから大変ですが、みんなのうれしそうな顔々。そんなこと言ってられない大事な仕事です」

 

 地元で応援する蒲生野町自治会の横山修司元自治会長(79)は振り返る。「助成会が土地探しで苦労していると聞いて、ならば何をおいても協力しようと地域がまとまってなごみの里へ土地を」。

 

 農業を営む野村仁元自治会長(70)も喜ぶ。「水路の泥上げなど職員の人がボランティアで参加してくれて助かっていますし、施設との交流も深まりました」。

 

 保護者会の橋本晃会長(82)も応援する。「時代が移り保護者も高齢になり親からきょうだいに。これからは誰でも参加でき、入所、通所、ワークそれぞれの立場で、課題を持ち寄り、みんなで協力して解決する方針です」。三者三様若々しく話す。

 

石﨑幸亮6代理事長

 

 『なごみの里・50年のあゆみ』(平成27年刊)をまとめたのは石﨑幸亮6代理事長(76)。この施設開設は市井の障害者の親の熱意と行動がその原点であると力説する。

 

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