社会福祉法人風土記<46>下関市市民生事業助成会 下 人らしく生きられる社会を

2019年0326 福祉新聞編集部
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2018年のお花見。下関市立考古博物館前(綾羅木郷遺跡)

 下関市民生事業助成会に40年間勤務する「なごみの里」佐仲文子・支援課長(60)は、「ご自分の家族で、この人(児)に障害があるのではと不安に思っている方や、障害を持っているので親亡き後が不安で心配と思い悩んでいる方は、施設に相談してみて下さい。今は地域にもさまざまな障害に関する専門機関があります。勇気をふるって相談して下さい。きっと解決の糸口がつかめます。就労支援、グループホーム、未就学児・就学児の進路相談もどうぞ」と丁寧に説明する。

 

 施設内を歩くと検便用便器、浴室横には障害者が使いやすい下足箱。職員にとっても動かしやすく便利だ。この手作り感あふれた備品は、運転手の植村元博さん(67)が本業の合間に、ホームセンターで材料を買いそろえ経費をかけずに作ったもの。修繕も手掛けている。いぶし銀のように障害者を支える人がいるのだ。

 

 2006(平成18)年、相談支援センターを開設。福祉系大学卒の岡田恭子係長(65)は、入所・通所支援など何でも相談を受ける。「今までの30年間のさまざまな経験がお役に立てればうれしいです」と控え目に話す。

 

 2008年、障害者就業・生活支援センターの開設。業務担当の横山美恵子課長(56)が語る。「小学校時代は吉見に住み、吉見小学校の文化祭、運動会には、よしみ園の人が招かれていました。大学に進みましたが、近くで役に立ちたいと思いました。その原点はお盆の時のこと。大雨が降って、いつも川にいるコイがいなくなったのを知った障害のある人が『墓参りに行ったんじゃろね』と言ったのです。その感性に感動した自分が今ここにいます」。岡田さんと同じ30年のベテランでどんな相談も引き受ける力強い存在である。

 

 石津育幸・支援課長(47)は「私たちは、生活能力の訓練、生きる手だてへの協力、生きる力をつけてもらうために仕事をしています。特に施設利用の人には、自分の気持ちが相手に伝わるような意思表示ができるようになってもらいたい。外で自分が困ったときに相手や周りの人に分かってもらうために。家庭生活、家庭環境からは可能な限り生活習慣を身につけて、この施設では集団生活、施設環境を通じて人に伝える能力の習得を。言葉でなくとも伝達する方法を身につけてもらえるように力を入れています」と話す。

 

 他の現場スタッフも張り切っている。「利用者その人を知ること。この人は何ができるか。隠されたどんな力があるか。若いヤンチャな利用者にはとことん寄り添って」(手島憲二・主任生活支援員・38)。「高齢の人はお茶と和菓子が好きというのは大間違い。今どきのケーキやパンが大好き(笑)。もちろん、そうでない人も。教えられる毎日です」(瀧口翔子・生活支援員・24)。

 

 

利用者と職員が協力して作った1.5㍍の色ティッシュによる壁画

 

 

 1937(昭和12)年開設の「下関善隣館」があったすぐ近く、新椋野という地にある「なごみの里」の地域支援のグループホーム(共同生活援助)で、大田俊子・地域支援係長(69)は、「現在、10カ所あります。働きながらの生活はここが出発点になります。それぞれに世話人がついて食事、体調管理をしていますが、利用する若い人は多様化しています。就労については、企業が働く人の特性を生かしてくれるようになりました。脇目もふらず真面目。笑顔が職場の雰囲気を明るくしてくれる。やめられたら本当に困るなど、反響がうれしいですね」と温かな笑顔で利用者の頑張りと企業への感謝を語った。

 

 「なごみの里」は「よしみ園」と同じように自然が豊か。少しにぎやかな町からは離れている。季節になると、深坂のため池(県内に約1万カ所)から水路を通って田んぼに水が流れてくる。池畔の桜並木は利用者の楽しい花見の場所。堰堤には天明8(1788)年作のこま犬が鎮座する。

 

松原靖彦7代理事長

 

 下関市社会福祉法人地域公益活動推進協議会の会長も務める松原靖彦7代理事長・統合施設長(74)が力説する。

 

  「地域のセーフティーネットの役割を担っていますから、さまざまな要因で社会のはざまに落ちそうな人を、福祉の制度で守り支援していきたい。下関という人口26万9000人の歴史ある地域を、人がより人らしく安心して生きられる社会にするために、関係する人、団体と手を携えて築いていきたい。手始めに協議会に市内福祉団体が100%加入してもらうこと。現在は約80%の52団体。そして私たちの法人、施設が50年どころではない80余年の歴史があることが証明された今、地域の拠点となって〝手をつなぐ地域〟を目指します。それが先人の願いだと確信するからです」 将来の展望も含めて結んだ。

 

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