社会福祉法人風土記<50> 浴風会 下 “地域と共に未来へ” 旗印に

2019年0726 福祉新聞編集部
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創立80周年に天皇皇后両陛下(現上皇上皇后)行幸啓の記念碑(2005年7月21日)

 平成の時代に入る。1995(平成7)年に高齢社会対策基本法施行。2000年に介護保険法施行。社会福祉士および介護福祉法は1987年に施行されたが、その以前の71年、20歳の時から浴風会に勤める百瀬律子・参事が振り返る。

 

 「90~96年にかけて広報誌『浴風園だより』の編集委員として、入園者の聞き書きをしたときに、印象的だったのは9割の方は先の戦争の体験談でした。男性は戦地のこと、女性は食料難で子育てが大変だったことなどです。ここで働くということは、時代は変わっても、一人ひとりの人生に向き合って仕事をすることが醍醐味であり、精神だと思います」

 

 続けて「2006年放映のNHKテレビ『クローズアップ現代~介護人材が逃げていく』は衝撃でした。希望者が減り、現場の介護職の誇りも傷つけられました」と厳しく指摘。そして穏やかに若い人に伝えたい。「介護は大変な仕事だけれど、笑顔でありがとうと返ってくる仕事。今の世の中にそんなにたくさんありますか」と。

 

 2000年に認知症高齢者の認知症介護技術に関する研究、研修、人材交流、情報発信の拠点として、厚生省(当時)の法令に基づき東京都杉並区(浴風会)と、愛知県大府市、仙台市にそれぞれ認知症介護研究・研修センターが設置された。

 

 佐藤信人・東京センター副センター長(66)は、「日本は認知症の有病者数が25年には740万人に上ると推計されています。介護する家族の人数を合わせると、6年後には2000万~3000万人という膨大な国民の皆さんが認知症と共に生きていく時代がきます。浴風会は認知症介護指導者と認知症地域支援推進員の育成、その有効な活動を地域に根付かせていく役割があります。認知症になっても、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる共生社会実現のために」。その上で、「認知症対応は医療(投薬)と介護ですが、広くは家族、友人、知人、地域サービス(浴風会もその一つ)の支えがあればこそ、その二つを生かすことができます」と丁寧に語る。

 

 その地域サービスの最前線に立つ遠藤雅晴・地域サービス部長(67)は、杉並区役所に37年勤務後、12年にこの職に就いた。詳しくは『浴風会90年の歩み』(15年刊)にあると前置きして現状と取り組みを語った。

 

 「介護保険で介護サービスは進みましたが、それで高齢者問題が解決するほど甘くなく、地域でも一法人(浴風会)で背負い切れるものではありません。担当する一つ、地域包括支援センター(ケア高井戸)などの仕事から見えてくるのは、地域の引きこもり、独居高齢者、在宅介護の実態の厳しさ。浴風会は長年にわたって培ってきたものを地域に還元するのが役割であり、時代の要請です」

 

 浴風会は京極高宣・11代理事長就任後の10年に、将来に向けて「基本構想」を策定し、具体化したのが、14年完成の浴風会病院(250床)、外来診療、老健くぬぎ(100床)、通所リハビリを合築し認知症専門棟も備えた高齢者保健医療センターである。

 

京極高宣・11代理事長

 

 伊藤嘉憲院長(60)は、1990年に神経内科医として派遣されて以来、貴重な高齢者医療を学ぶ機会を得て、現在があると語る。

 

 「当院の医師は疾患の治療にとどまらず、患者の価値観、人生観、家族背景などを基に全人的なケアを行うことが求められていました。今も同じです。外来に通院されていたころから亡くなられるまで、長年にわたり担当した方も多く、患者や家族との信頼関係を築き上げ、人生の最期までケアさせていただくことは、大変やりがいのある仕事です」と話し、地域に果たす役割として「当院は過去において浴風会内施設の利用者向けの診療を主たる役割としてきた歴史が長く、地域医療への貢献はいまだに発展途上の段階にあると言えます」と結んだ。

 

 京極理事長は「戦前の高齢者養護を中心とした財団法人から戦後の高齢者福祉の社会福祉法人へと転換し、そして21世紀の高齢者医療・介護・福祉のセンター・オブ・センターズ(the center of centers)に向けて、さらなる進化を遂げようとしています」と歴史を振り返る。

 

 そして、「創立100年に向けて、わが国屈指の社会福祉法人(6事業。1日の利用者約2350人、スタッフ約850人)として、基本理念(1)地域との協働と社会貢献(2)利用者中心のサービスの提供(3)専門職の連携を生かした職場づくり(4)着実な事業実施のための経営基盤づくりを掲げて、いま以上に地域住民の福祉ニーズに積極的に応えるべく、在宅医療、在宅介護、訪問リハビリなどを推進させ、事業展開してまいります。〝地域と共に未来を開く〟浴風会を目指し、これからも役職員一同一丸となって頑張ってまいりたい」と抱負を語った。  

 

【高野進】

 

 

 

 

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