社会福祉法人風土記<51> フランシスコ第三会マリア園 中

2019年0904 福祉新聞編集部
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マリア愛児園とみこころ荘

 新潟県上越市の社会福祉法人「フランシスコ第三会マリア園」。そのルーツは1932(昭和7)年に開園した「暁星幼稚園」。法人の母体になる「カトリック高田教会」(上越市西城町)の第5代主任司祭になるグリントゲス神父が開園した。

 

 開園当初は教会の敷地内にある約40平方メートルの「信者集会所」が使われた。高田教会の第7代主任司祭になるポスト神父の時代、木造2階建ての園舎に移ることになるのだが、その経緯が実に興味深い。

 

 ポスト神父は幼稚園運営のほかに、もう一つのプロジェクトを進めていた。教会の敷地(約3300平方メートル)に付属の「慈善病院」を建設する計画だった。満足に医療費を払える市民は限られ、病に苦しむ人たちが多い時代だった。病院を予定していた聖堂裏の敷地に「遊郭」に使われた木造2階建ての建物を解体移築した。また、故国のドイツに働き掛け、医師、看護師、医療機器と病院に必要なものをドイツから運び込む手はずを整えていた。

 

 だが、この計画に地元の病院、開業医から「待った」がかかって、計画は頓挫した。後年の94年5月、地元紙の「上越タイムス」は「ポスト神父の思いを断念させるだけの何かが、水面下で工作されたのだろう」と書いている。

 

 病院計画が行き詰まったことで、暁星幼稚園はその建物の1階に移り、名前が「マリア園」に変わった。マリア園は太平洋戦争の激化に伴い、園児が減少。42(昭和17)年に自然閉園になってしまう。高田教会の第9代主任司祭で、マリア園の園長だったサウエルボルン神父が、カトリック宣教は「不敬罪」に当たるとして、45(昭和20)年8月まで約1年4カ月も拘束された。教会の建物もマリア園も鉄の鎖で縛られ、立ち入りができなくなるという激動の時代を経験した。

 

 太平洋戦争の傷跡は深く、戦後間もなくマリア園には戦争未亡人や戦災引き揚げ者の家族が駆け込んできた。47(昭和22)年に住宅困窮者にマリア園の2階を無償提供したことが母子寮、現在の母子生活支援センター「みこころ荘」の始まりになる。さらに49年に「マリア愛児園」と改称した保育所が認可される。遊具など何一つなく、備品や資金集めに奔走した。信者からオルガンと小さな机やいすに、砂場や滑り台の寄付もあっての開園だった。

 

昭和24年ごろのマリア愛児園

 

 社会福祉法人の設立認可を受けるのは57(昭和32)年のことになるが、これを前に11(明治44)年からカトリック高田教会の開設と、暁星幼稚園やマリア愛児園の開設にかかわってきた「神言修道会」から運営主体が56(昭和31)年に現在の「フランシスコ修道会」に移される。「高田教会年表」に「宣教が神言修道会から、フランシスコ会に移管される」とだけある。高田教会の「創立百周年」(2009年)にローマ教皇庁大使から届いたあいさつ文に「神言修道会は名古屋市で南山大学を創立するため、名古屋に力を集中する必要があった」と、移管した理由が記されている。フランシスコ会に移管された翌年に「社会福祉法人マリア園」の設立認可を受ける。宗教法人から社会福祉法人に変わったことで、老朽化したマリア愛児園の建て替えに着手する。

 

 64(昭和39)年に「老朽民間社会福祉施設整備補助金」を受けられることになる一方、市内にあった「大町児童公園」に新園舎を建てることができた。約800平方メートルの土地を高田市が15年間無償貸与する契約で、翌年に新園舎が完成する。建設工事費1880万円のうち、国と県、それに市の補助金が1055万円。残りを年金福祉事業団からの借り入れや寄付金305万円で賄った。

 

 だが、新園舎があった場所は運河を埋め立てた土地で、大雨が降ると浄化槽があふれた。谷間のような地形で、夏は風通しが悪くて蒸し暑い上に、西日が強かった。冬には積雪で吹きだまりができ、雪解けも遅く、園児たちは通園に難渋する。運動会のスピーカーの音がうるさいと抗議が繰り返された。

 

 地盤沈下や建物の亀裂が生ずるに至って、教会がある西城町の元の場所に移る計画が始まった。「里帰り計画」は日照権など既得環境権を主張する住民からの苦情処理など、いくつものハードルを越えることになる。教会敷地内に「マリア愛児園」は83(昭和58)年に、同園の階上にある「みこころ荘」は85年に完成する。 

 

【澤晴夫】

 

 

 

 

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