看取り率3年連続100% 多職種連携で実現した埼玉の特養

2016年0307 福祉新聞編集部
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リフトと特殊浴槽で負担の少ない入浴ができる
リフトと特殊浴槽で負担の少ない入浴ができる

 埼玉県鴻巣市の特別養護老人ホーム「吹上苑」(関口敬子施設長)は、多職種連携と福祉機器の活用により、希望者全員の看取りケアを行っている。人生の最期を豊かで安楽に過ごしてもらうためにも、職員の負担を軽減するためにも、福祉機器は欠かせないものになっている。

 

 社会福祉法人えがりてが運営する吹上苑は、従来型50人(要介護度4・2)、ユニット型48人(同3・9)の施設。2008年から機器の活用を始め、現在はリフト30台、調整機能付き車いす46台、高機能車いすクッション51個、褥瘡予防マットレス49枚、ポジショニングクッション114個などを使い、安全・安楽な移乗ケア、自立度を高める姿勢ケアを実現している。

 

 吹上苑が看取りケアを始めたのは01年。きっかけは看護師の小林悦子・統括リーダーが、入院した利用者から「吹上苑に戻りたい。迎えに来てくれたの?」と言われながら、その希望に応えられなかったことだった。

 

 看取りケアをしていない施設の場合、看取り期に入った利用者は病院と施設を行ったり来たりになる。いつもケアしていた利用者を最期までケアできないこと、一緒に暮らした利用者や職員と別れのあいさつをさせてあげられないことをつらく悲しく思っていた小林さんは「利用者の希望に応えたい」と関口施設長に相談。看護師の熱い思いから看取りケアが始まった。

 

 最大の課題は看取ってくれる医師の確保だったが、在宅での看取りを行っているシャローム病院の協力を得ることができ、02年に配置医を変更。24時間対応してもらえるようになった。また、04年にユニット型を併設したことにより、看護師と夜勤者が増員。小林さんと同じ思いを抱いていた介護士や栄養士の協力も得られるようになり、看取りケアは施設全体の取り組みになっていった。

 

ベッド稼働率も向上

 看取りケアは、入居時に利用者や家族に説明して、意向を確認するところから開始。看取り期に入ると、施設長、介護支援専門員、看護師、相談員、介護士、栄養士、家族によるカンファレンスを開いて、利用者・家族の意向を最大限尊重したケアプランを作成する。

 

 栄養士は利用者の好物を食べやすく工夫。看護師・介護士は誤嚥性肺炎にならないよう、常にも増して食前食後の口腔ケアに気を配り、穏やかに過ごせるよう室内環境を整え、皮膚の清潔やベッドでの安楽な姿勢の確保などに努める。一時帰宅や墓参りなどの希望にも応える。

 

 看取りケアに不可欠なのがさまざまな機器だ。ベッド上での安楽な姿勢の確保や褥瘡予防には、㈱タイカのエアマット「アルファプラ・ソラ」やポジショニングクッション「ウェルピー」が活躍。安全な移乗ケアや入浴ケアには、㈱竹虎の「かるがる」などのリフトが欠かせない。また、安定した座位が保持できるラックヘルスケア㈱のティルト・リクライニング車いす「ネッティ」を使うことで、寝かせきりにしないケアや一時帰宅ができるという。

 

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楽な姿勢が保持できるよう車いすを調整する

 

 エアマットとクッションでベッド上の寝姿勢も工夫


エアマットとクッションでベッド上の寝姿勢も工夫

 

「機器があるから最期の時間を豊かで安楽に過ごしてもらうことができる。看取りケアは職員の精神的負担が大きい。そこに身体的負担まで加わったらできない。機器は両者の身体的負担軽減に不可欠」と小林さんは話す。

 

 02年度から14年度までの13年間に施設で看取った利用者はショートステイを含め268人、病院で亡くなったのは9人。施設での看取り率は97%で、12~14年度に亡くなった103人は全員を施設で看取っている。

 

 最期まで施設で過ごしてもらうことで吹上苑のベッド稼働率は99%になった。「稼働率向上や加算のために看取りケアに取り組んだわけではないが、結果として職員配置を手厚くできている」と話す関口施設長。「人生の最期を迎えた利用者の尊厳を守るためには、看取りケアは欠かせない。利用者・家族の意向に沿った看取りには、入居時から家族との信頼関係を構築することが求められる」という。

 

 利用者が亡くなった後も全身を清拭し、好きだった和服や背広に着替えさせ、薄化粧するエンゼルケアを行い、自ら過ごしたユニットで利用者や職員、家族が参加するお別れ会を開く吹上苑。それは“終のすみか”としての特養ホームのあるべき姿だろう。

 

 

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