精神病院を廃止したイタリアの大学教授が講演 「精神医療はピアサポートが主流に」

2015年1020 福祉新聞編集部
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司法精神病院の映像も公開された

司法精神病院の映像も公開された

 

 バザーリアは「自由こそ治療だ」と言ったが、これは今でも重要性を持つ。治療する側とされる側という序列が残っているからだ。

 

 司法精神病院は今でも国内に六つあり、約1500人が入院している。そのうち630人は再犯の危険性があると考えられている。

 

 イタリア議会委員会による司法精神病院抜き打ち検査(2010年に実施)の模様はテレビ放映され、国民は今でも非人間的な扱いがあることを知った。

 

 「3年間の入院のはずが30年になった」と苦情を訴える男性の映像もあった。

 

 それを受け、イタリアでは司法精神病院をなくし、保護付きの小さな機関でケアしようという取り組みが4年前から始まった。

 

 「診断」すると患者にスティグマを貼り付け、専門職との間に上下関係を生んでしまう。専門職はこのことに注意する必要がある。

 

 患者が本当に望むものを聞き、それを実現するための環境を整えるよう私は気を付けてきた。ヴェローナには精神科医、心理士、ソーシャルワーカーなど異なる専門職によるチームがあり、チームで動ける法制度になっている。機動性、継続性が重要であり、私もチームの一員として患者のいるところならどこにでも出向いた。

 

 ヴェローナのセルフ・ヘルプ・グループは90年に創設され、2002年に社会的協同組合を生み出した。当事者が他の当事者を助け、それを職員がサポートしている。

 

 こうしたピアサポートはさらに発展し、中心的な活動になるだろう。

 

 国連の障害者権利条約は医学モデルを放棄した。障害を社会モデルで捉え、「障害者がそのままで生活できる社会を作る」と定めた。国際生活機能分類(ICF)は、障害を個人と環境の相互作用にある問題だと捉えた。

 

 私は生物多様性と同じように精神多様性を広めたい。専門職は柔軟性を持つべきだ。そうすれば患者も柔軟になる。大切なのは良い患者にすることではない。これは当たり前のことだが、実践するのは難しい。

 

 

ロレンゾ・ブルチ(ヴェローナ大学精神医学科教授、精神科医)

 1947年生まれ。南ヴェローナ地区のコミュ二ティ・メンタル・ヘルスチームの責任者として指導的な役割を担った。心理社会的リハビリテーション・イタリア協会名誉会長。著書に『コミュニティメンタルヘルス』(共著、中央法規出版)がある。

 

 

 

関連書籍

 

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