買い物困難地域で障害者が一役 滋賀県の法人が移動販売

2015年1110 福祉新聞編集部
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車から流れる音楽でお客さんが集まる

 琵琶湖の北西部に位置する滋賀県高島市にある社会福祉法人虹の会(井上四郎太夫・理事長)では、障害のある人たちが作ったパンやお総菜、園芸品などを車に積み、買い物の不便な地域を定期的に訪ねる移動販売を行っている。今年10月で5年目に入り事業として定着。「誰もが安心して暮らせる地域にしたい」という思いも積んで走っている。

 

 

 移動販売の名称は「ぎょうれつ本舗」。数台の車が列を組み、商店街が移動するイメージから名付けられた。

 

 この日は3カ所を回る約50㌔の行程。スタッフは、虹の会の三つの障害者就労系事業所(アイリス、ドリーム・あんです、大地)の利用者5人、職員4人。出発前ミーティングでは全員で「ありがとうございました」など接客5大用語を元気に唱和。お客さんと仲良くなること、笑顔であいさつすることが目標だ。

 

 3台の車に商品を積み分け出発し、山あいの道を並んで進んでいく。目的地が近付くと車から音楽を流し到着を知らせ、準備をしていざ開店。既に集まっているお客さんに対し、利用者らは「いらっしゃいませ」などと声を掛ける。

 

 

移動商店街ぎょうれつ本舗

移動商店街ぎょうれつ本舗

 

 

 虹の会では、施設で作ったパンの販路拡大を模索する中、市民の困りごと調査で2位が買い物不便だったことに着目。専門家の助言を受け「地域での障害のある人たちの働く場の確保」と「高齢化、過疎化による買い物難民の増加」の二つの課題を解決する取り組みとして、市や助成団体の支援も得ながら進めてきた。責任者の田村きよ美・アイリス施設長は「施設内での仕事だけではなく、地域で役割を見付けていくことが大切」と語る。

 

 移動販売では、ただ物を売り買いするだけでなく、お客さんとの交流や触れ合いを大事にしている。利用者の接客がおぼつかない時はお客さんが諭してくれたり、逆に注文品を持って行ったらお客さんが頼んだことを忘れていたり…。そんな持ちつ持たれつのゆったりとした関係でつながっている。

 

 お客さんは口々に「来てくれて助かる」「いつも来るのを待っている」と話す。利用者にはそれが「必要とされている」「行けば喜ばれる」という意欲につながり、自立心が芽生えてくる。

 

 売り込み上手の利用者は「今日はお総菜が売れなくて残念だけど、高齢者と話していると和らぐ。この仕事は楽しい」。また初めてスタッフに加わった利用者は、自分が苗から育てた花が売れて満面の笑みに。

 

 この日は豆腐、油揚げ、パンなどが完売し、売上は約1万5000円。ガソリン代、車の維持費などを考えると採算は取れないが、虹の会では「地域に必要とされる事業は実施していく必要がある」と考えている。課題は品数を増やすことで、特に果物、肉、魚などの生鮮食品のニーズは高い。また職員体制を整備する必要もある。

 

 昨年10月には、移動販売の拠点となるカフェをオープンさせた。そこで移動販売のお客さんから仕入れた山菜などをメニューや商品に活用している。

 

 田村さんは「地域の人に支えられ、役に立つことで、利用者は生き生き働くようになってきた。ぎょうれつ本舗はこれからも走り続けます」と話している。

 

 

接客を通してお客さんとの交流も

接客を通してお客さんとの交流も

 

 

 

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