元児童養護施設職員が開いたカフェ 児童福祉の便利屋めざす

2016年0226 福祉新聞編集部
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下校途中の小学生があいさつにくる

 ドンドン! お昼過ぎ、準備中の札が下がったカフェの扉をたたく音がする。扉の向こうではランドセルを背負った小学1年生2人が、にこにこしながら店内をのぞいていた。「おかえり」と店長の武石由貴子さんは声を掛けにいく−。

 

 東京都世田谷区の世田谷代田駅からすぐのカフェ「シモキタトナリ」でおなじみの光景だ。一見普通のカフェだが、実はちょっと違う点は、オープンさせたのが元児童養護施設職員たちだということ。2015年5月設立の一般社団法人「SHOEHORN」(シューホーン)代表の武石和成さん(32)が施設の子どもや退所者、職員らの役に立ちたいと同年6月に開いた。武石夫妻の他に3人のスタッフがいる。

 

 営利の事業として、福祉活動の場になるカフェの運営と店頭で野菜の販売を行う。地域の親子連れや仕事帰りのサラリーマンらがよく訪れるという。

 

 福祉関連の活動は、例えばカフェの準備中に、地域の不登校気味の子どもに勉強を教えている。また、アルバイトで失敗し、自信をなくした児童養護施設の子どもに次の就職へのステップになるよう、カフェを職場体験の場として使ってきた。

 

 事業の委託や助成金は受けていない分、自由に子どものニーズに合わせて支援を提供できる。カフェの売り上げは人件費や運営費を賄うので精いっぱいのため、福祉活動はボランティア。ケースによるが、利用者には飲み物などの注文をお願いし、間接的に利益を得ている。

 

 和成さんが思い描くのは、このカフェが例えば▽多忙な施設職員の手が届きにくい、不登校になった入所児童の日中過ごす場▽施設を退所した人がふらりと寄れる場−などになること。

 

 和成さんは児童養護施設で働いていた際、退所した子どもが路上生活に陥るケースに直面。衣食住の確保のほかに“話を聞いてくれる存在”が求められていると気付き、それに専念するためにこのカフェを立ち上げた。

 

 また、利用する子どもが「自分はできる」と感じる体験を提供したいという。具体的には、ポップづくりに興味のある子が来れば制作を任せ、「おかげさまで売れたよ」などと声を掛ける〝協働〟に取り組んできた。

 

 和成さんは「施設職員は子どもにしてあげたいことのアイデアを持っていても、時間やルールの制限で、できないことがある。私が児童福祉職員の便利屋さんになって実現したい。職員のように濃密ではないが、子どもと細く長くつながる場をつくりたい」と願う。

 

代表の武石和成さん(右)と店長の由貴子さん(左)夫妻

代表の武石和成さん(右)と店長の由貴子さん(左)夫妻

 

 

 

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