重症心身障害児者の「?」と「!」と生きる

2016年0303 日浦 美智江・社会福祉法人訪問の家理事
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日浦美智江 訪問の家理事(横浜市)

 2014年に104歳で亡くなられたまど・みちおさんの詩が大好きです。まどさんは「世の中に『?』(クエスチョンマーク)と『!』(エクスクラメーションマーク)と両方あれば他にもう何もいらん」とおっしゃったそうです。本当にそうだと感心しました。「えっなんで」と疑問符が生まれて、そこに答えが見えた時の「おーっ」と動く心。重症心身障害児者に出会って43年、何だかいつもこの「?」と「!」と一緒に生きてきたように思います。言葉を持たないみんなの心の動きを感じるには小さな表情の変化の発見が大切です。「えっ、何?」と小さな動きに惹きつけられ、その心を推し量りました。

 

 あの日のマーちゃんを思い出します。

 

 まるで板のように寝た状態、硬くつっぱった体は抱くのも大変でした。端正な色白の顔にたっぷりの黒い髪、まるで若武者のようなマーちゃんですが、表情もほとんど変わらず、声を出すこともなく、グループの中でも静かな存在でした。

 

 ある日の朝、通所施設の玄関を入ってきた時の顔がいつもより紅潮しています。「熱があるのでは」とすぐ静養室に向かい熱を測りました。やはり熱がありました。このまま静養室で様子を見ようと看護師さんとスタッフで話しました。

 

 その時です。マーちゃんが小さな「フン、ふん」と言う声を出したのです。よく見ると目からすーっと涙が出ています。「どこか痛いの?」と看護師さんが体のあちこちを検査しました。どこも異常はありません。

 

 みんなで首をかしげていたところ、一人の若い女性の職員が「マーちゃん、自分のグループの部屋に行きたいのでは?」と言ったのです。「えっまさか」と言うのが私を含めその場にいたみんなの気持ちでした。

 

 マーちゃんを彼のグループに連れて行きました。なんと部屋に入ったとたん、彼の泣き声がやみました。その穏やかな表情を見た時の私たちの気持ちは、驚きと同時に正に「!」エクスクラメーション、彼の心の発見でした。今もあの時のことを思います。

 

 みんな心を持っている、心の動きが見えないから心がないのではない。かすかな心の動きを見つけたい、そんな心の動きを見つけた時の感動、これが私たちを支えてきたのです。「?」と「!」、本当に、一番大切な生きるマークです。

 

 

 

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