改正自殺対策基本法が成立 自治体の計画づくり義務付け
2016年03月29日 福祉新聞編集部
改正自殺対策基本法が22日、衆議院本会議で全会一致で可決、成立した。施行は2016年4月1日。自殺対策を「生きることの包括的な支援」と新たに位置付けた上で、地方自治体に自殺を防ぐための計画策定を義務付けた。
改正は議員立法で策定された06年以来、初めて。成立から10年を機に、全国の60団体以上で構成する自殺対策全国民間ネットワークなどが、超党派の「自殺対策を推進する議員の会」(尾辻秀久会長)に法改正を求め、おおむねこれに沿った内容で改正された。
改正法は、法の目的に「誰も自殺に追い込まれることのない社会」を目指すことが重要な課題だと明記。基本理念を定めた条項には、「生きることの包括的な支援」として、自殺要因の解消に向けた環境整備の充実を盛り込んだ。その上で、保健、医療、福祉、教育など関連施策との有機的な連携を求めた。
また、これまで国だけに義務付けられていた自殺対策の計画策定を、都道府県や市町村にも義務付けた。自殺者の年代や職業などの分析を強化し、より地域の実態に合った対策を促す。
さらに、行政だけでなく、医療機関や事業主、学校、自殺対策を行う民間団体など関係者の連携と協力も明記。エビデンスに基づいたPDCAサイクルで対策を進めたいという。自殺対策を行う人材の確保や、学校や職場での啓発推進なども定められた。
自殺対策をめぐっては、16年4月から所管が内閣府から厚生労働省へ移る。厚労省内に自殺対策推進室が新設され、省庁横断的な体制として、事務次官を本部長とする「自殺対策推進本部」(仮称)もできる。
今後、厚労省は白書の取りまとめや、17年8月に改定される自殺総合対策大綱の見直しにも取り組む。これまで補正予算で組まれてきた予算も、16年度からは厚労省の当初予算として前年度と同額の25億円を計上。恒久財源化されたことで、市町村が中長期的な視点で取り組めるようになるという。
年間の自殺者は1998年以降、14年連続で3万人を超えていた。2015年は2万4025人に減ったものの関係者からは、年間の自殺者1万人台を目指し、さらに自殺対策の基盤強化を求める声がある。
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