成年後見制度利用促進法が成立 高齢化で利用拡大促す

2016年0411 福祉新聞編集部
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利用促進法を所管することになり、答弁する 加藤勝信・内閣府担当大臣(中央)

 認知症などで判断能力が不十分な人に代わり財産管理や契約行為を行える「成年後見制度」の利用促進を図る法案などが6日の参議院本会議で、一部修正の上、与党や民進党などの賛成多数で可決され、8日までに成立した。社会のさらなる高齢化を見据え、制度を見直しながら利用拡大を促す。しかし、現行の枠組みのままでは被後見人の意思をくまない不適切な運用が進むとの懸念もあり、自己決定権を尊重する旨の付帯決議がついた。

 

 8日に「成年後見制度利用促進法」(施行は一部を除き公布日から1カ月以内)が、6日に「改正民法及び家事事件手続法」(施行は公布日から6カ月後)が成立した。いずれも衆院内閣委員長による議員立法として今国会に提出された。3月中に成立する見込みがずれこんだため、利用促進法は一部文言を修正した。

 

 利用促進法は、需要を把握して後見人の担い手を育成するなど制度の利用を促すもの。同時に①被後見人の権利制限の在り方②後見人の事務範囲③後見人を監督する家庭裁判所の人員体制の整備−などを検討し、法施行後3年以内に法制上の措置を講じるよう政府に求めた。

 

 それらを推進する体制として、首相をトップとする「成年後見制度利用促進会議」を内閣府に設ける。同会議は専門家による委員会に制度の普及などを図るための基本計画案を諮問する。政府はそれを踏まえて基本計画を閣議決定する。

 

 一方の改正法は、家庭裁判所が認めれば、後見人が被後見人宛ての郵便物の配達を受けたり、被後見人の死後に火葬手続きをしたりできるようにする規定を設けた。

 

 また、被後見人の死亡後の後見人の権限として、相続財産に属する債務の弁済などを位置付けた。

 

 成年後見制度をめぐっては、後見人による財産の横領(2014年は被害総額56億円。最高裁調べ)や、被後見人の意思を無視した居所指定など不適切な運用があり、国会でも取り上げられた。

 

 本人に意思能力がないという前提で代行決定する現行の枠組みについては、国連の障害者権利委員会が障害者権利条約に反するとの見解を示している。

 

 5日の参院内閣委員会は付帯決議として、障害者権利条約第12条(法の前にひとしく認められる権利)の趣旨に沿って被後見人の自己決定権を最大限尊重すること、後見人による不正を防ぐための措置を講じることを政府に求めた。

 

なぜ利用が低調なのか

 

【解説】

 

 ある日突然、後見人を名乗る人物がやってきて、「お宅のグループホームにいる知的障害のAさんはB市に移ることになった」と運営法人に宣告する。Aさんの姉がAさんの知らないうちに後見人を申し立てたことが後で分かる。そんなことが現実に起こっている。

 

 不適切な運用があることは、利用促進法の起草者も「承知している」とし、本人の意思を尊重するよう見直すという。大切なのは、どの程度踏み込んで見直すかということ、十分に改善された上で利用を促すという順番を守ることだ。同時進行では危うい。制度の利用人数は約18万人(14年末)。必要な人が利用していないという判断が利用促進法の背景にある。まずは、なぜ利用が低調なのか丁寧に探るべきだ。

 

 

 

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