鳥獣被害防止へ鹿肉で佃煮 社会福祉法人、農家組合、自治会が取り組む

2016年0422 福祉新聞編集部
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佃煮に使うショウガを千切りにする利用者

 自治会や農家組合などと一緒に地域協議会を立ち上げ、地域課題の解決を目指している社会福祉法人がある。京都府亀岡市の亀岡福祉会(西村直理事長)だ。その第一弾で始まった鹿肉を使った佃煮「丹亀」(たんかめ)ブランドは、有害鳥獣の被害防止に役立つ農福連携事業としてだけでなく、地域・経済活性化などにつながる活動として大きな期待が寄せられている。

 

 養護学校卒業後の居場所がほしいという障害児をもつ親の願いと、その願いをかなえてあげたいという市民の支援を受けて、1978年に開所した亀岡共同作業所を母体とする同会。「障害者が地域の一員として共に暮らせる地域づくり」を目指し、通所施設3カ所、グループホーム7カ所などを運営している。

 

 同会が地域課題と向き合うきっかけは、定員50人のかめおか作業所(石田將人所長)が2012年に府の障害者就労支援モデル事業の指定を受け、工賃増のため売れる商品の開発に着手したことだった。

 

 同作業所は漬物などの食品加工をしており、地元の亀岡牛に目を付けて佃煮をつくった。しかし、モデル事業のコンサルタントからは「地元の食材を使うだけでは売れない」とダメ出し。「これからは地域課題を解決するような付加価値のある商品をつくらないといけない」とアドバイスされ、自治会や農家、猟友会、森林組合の関係者から地域の歴史や困っていることを聞くことにした。

 

 すると、少子高齢化などで休耕田が増えたり、鹿や猪など有害鳥獣の被害が広がったり、亀岡祭山鉾行事で鉾の引き手がいなかったりする中山間地ならではの課題が分かった。特に鹿は死後30分以内に加工しないと食肉として使えず、猪肉のように流通ルートも確立していないため、猟師も捕ろうとせず被害が深刻化していた。

 

 市民の支援で作業所を開設した経緯がある同会は「地域に貢献することが法人の役割」と考え、14年4月に三つの自治会や農家組合、しょうゆ会社、NPOと「自然豊かな亀岡の未来をつなぐ地域協議会」を結成。地域・経済の活性化や、雇用・生きがいの創出、有害鳥獣の有効活用、工賃向上に取り組むことにした。

 

 開発を進めていた商品は、鹿肉の佃煮に変更。市内に食肉加工場がなく同市で捕獲した鹿肉が使えないため、隣の南丹市美山町で捕獲された鹿の前足の肉を使い、圧力釜で炊いた後、利用者が手作業でそぎ落とし、地元産のしょうゆやハチミツを入れ丁寧に煮込むことで完成させた。

 

鹿の肉を丁寧に処理する

鹿の肉を丁寧に処理する

 

 サンショウ味とショウガ味の佃煮は、地域協議会の「丹亀」ブランド商品として同会に委託され製造する形を取り、「丹乃鹿(たんのしか)の生ふりかけ」として、50㌘入り1250円(税込)で販売。市内の温泉旅館や京都市内の土産物店などで販売しており、多い月で100個ほど売れるという。

 

 「まだ収益が出ない状況。鹿の捕獲は営利目的でなく、個体数を適正に保つために行うもの。市内に食品加工場ができれば、雇用創出できるし、猟師の収入も増え、農家の被害も減る。生ふりかけはその一歩。都市部での販路を探したい」と話す石田所長。土産物として購入しやすい20㌘入り500円の鹿肉を使った「ごちそう味噌」や、ニンニク味の生ふりかけの販売を4月から開始するなど「丹亀」のブランド力向上を目指すという。

 

 山鉾の引き手に利用者や職員が参加したり、「おらがまち・すごいところ大発見ツアー」を企画したりするなど、住民と一緒に地域課題の解決に向けた活動を行う同会。その取り組みは、地域社会における社会福祉法人のあるべき姿を示している。

 

木製のマスに入った佃煮は 高級感がある

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高級感がある

 

 

 

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