【熊本地震】たまる福祉施設職員の疲労 応援派遣には遠慮がち

2016年0502 福祉新聞編集部
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「利用者にけががなくて良かった」と菊愛会の橘さん(右、4月22日午後3時、菊愛会法人本部で)

 熊本地震は発生から2週間が過ぎた。被害の全容が見えつつある中、各福祉施設では利用者の生活を支えながら、避難してきた地域住民への支援が続いている。想定外の出来事に職員らは疲労の色をにじませながらも懸命に奮闘している。また、被災市町村では災害ボランティアセンターが発足し、活動が本格化してきた。

 

 「14日の地震から4日たってようやく寝られた。気が張っていたのかもしれません」。

 

 熊本県菊池市にある社会福祉法人菊愛会の「障がい者サポートホームわらび」の橘啓一・主任支援員(47)は16日未明の本震の時、宿直だった。立っていられないほどの大きな揺れに、すぐに入所している障害者の部屋を見て回り、全員の無事を確認した。夜が明けてから法人本部の建物に避難。余震も続く中、不自由な避難生活に寄り添っている。

 

 橘さんは発達障害のある娘(22)がいる。娘が心配になるが、利用者から離れることはできない。自宅も大雨で石垣が崩れる被害にあった。父母と息子(20)に娘や家のことを任せるしかなかった。

 

 また橘さんは自宅のある地域で消防団員をしている。施設にいる時、携帯電話が鳴った。担当地区で道路の陥没などがあり孤立しているため、応援に入らなければならない。慌ただしく現場に行き、復旧作業に加わった。

 

 施設職員、父親、消防団員。橘さんにはそれぞれの場で役割と責任があり、気が休まる時がなかった。「周りの職員が気を遣ってくれてここまでこれた」と疲れた表情を見せず、笑顔で語る。

 

 益城町や南阿蘇村などの被災市町村の特別養護老人ホームや障害者施設などでは、職員らは自分や家族のことを後回しにして利用者の命を守るために踏ん張っている。

 

 車内に寝泊まりしている職員、避難所から通っている職員、自宅が全壊し施設に寝泊まりしている職員など、ゆっくり寝ることもままならない。

 

 緊急事態に変則勤務で対応している施設も多く「疲れているけどアドレナリンが出っぱなし」と言う理事長もおり、疲労がにじむ。

 

 施設には応援職員派遣の申し出がくるが、「建物は壊れていないので自分たちで頑張る」「全国的に介護職が不足しているので遠慮がちになる」といった声が聞かれた。また、前例のない出来事に施設が受け入れ体制をとれず、ある職員は「どう動いてもらえばいいか指示が出せない」と言う。

 

 一方、益城町の特別養護老人ホーム「ひろやす荘」には社会福祉法人同和園(京都市)や社会福祉法人生活クラブ風の村(千葉県)などが支援に入っている。みな自主的に施設に来たという。

 

 ひろやす荘を運営する社会福祉法人慈光会の永田啓朗・理事長は「アポなしで来てくれた方が助かることもある」と話している。

 

 

 

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