改正児童福祉法が成立 東京23区にも児相設置へ

2016年0606 福祉新聞編集部
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参議院厚労委員会

 深刻化する児童虐待の防止対策強化を図るため、児童相談所の体制整備を柱とした改正児童福祉法などが、5月27日の参議院本会議で全会一致で可決、成立した。新たに東京23区で児相の設置が可能になる。人口20万人以上の中核市でも設置が進むよう支援する。一部を除いて2017年4月に施行される。

 

 現在も児相の設置は中核市で認められているが、47市中、金沢と横須賀両市が置くにとどまる。政府は施行5年後をめどに開所促進に必要な支援をする。

 

 職員の充実にも取り組む。児童心理司や医師または保健師などの専門職を必ず児相に置くことになった。法律に関する知識が必要な業務をスムーズに進めるため弁護士の配置も盛り込んだ。この部分は今年10月から施行される。

 

 専門性強化へ、児童福祉司やその指導役に研修を義務付ける。

 

 児相の権限を強化するため、虐待が疑われる家庭に強制的に立ち入る「臨検・捜索」について、保護者に再出頭要求を経なくても、裁判所の許可状で実施できるよう手続きを簡略化する。

 

里親支援は児相の役割

 

 今回の改正で、児童福祉法にすべての児童は適切に養育される権利があることが明確にされた。また、家庭で養育できない子が、家庭と同様の環境で継続的に育てられるよう国や自治体は対処することとした。

 

 そのため家庭養護推進へ、里親支援や養子縁組に関する相談・支援も児相の業務に位置付けた。

 

 政府は改正法施行後、速やかに特別養子縁組制度の利用促進のあり方について検討することも検討規定に明記された。

 

 厚生労働省は法改正に向けて15年9月に「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」を発足。塩崎恭久・厚労大臣の「現行制度を抜本的に見直す」とした号令で、総勢30人の委員が議論を交わした。取りまとめは12月10日のはずだったが、塩崎大臣の指示で急きょ福岡市の児相で働く弁護士からヒアリングが実施され、3カ月後の3月10日に持ち越された。

 

 法案の国会提出後、衆院厚労委員会での審議では、民進党が国や自治体の責務に妊産婦支援を加えることなどを求める修正案を提出し、否決された。民進党は保育士の給与を月5万円上げることを盛り込んだ法案と児童福祉法等の改正案をセットで審議するよう求めていたが、実現しなかった。

 

 参院厚労委では、児童福祉法の対象年齢を超えても、児童養護施設などで暮らす子どもたちが、必要な支援を受けられる仕組みを早急に整備することなど、10項目の付帯決議が付いた。

 

◆厚労省の専門委員会委員を務めた磯谷文明・弁護士の話

 

 今回の改正法は一定の前進とは言えるが、現行制度を抜本的に見直すには議論の時間が短すぎ、積み残した課題が少なくない。専門委員会での議論を振り返ると、理念やアイデアは出てくるものの、その長短を明らかにする論点整理が深まらなかった。専門委員会の運営についても、15年12月に開催した後、ぱったり開かれず、今年3月になって唐突に取りまとめ案が示された。しかも審議が2時間しか許されないなど、進め方にも疑問が残った。報告書には体罰禁止を盛り込むべきとあったのに、法案に採用されなかった理由も明らかではない。児童福祉司の専門性の向上や国家資格化、児童相談所のあり方などに関しては今後じっくりと議論する必要がある。

 

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