ペットの犬・猫と一緒に入所できる特養ホーム 入所者や職員にも効果

2016年1122 福祉新聞編集部
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愛犬のナナちゃんと一緒に入所した榊原さん

 神奈川県横須賀市のさくらの里山科(社会福祉法人心の会)は、ペットの犬・猫と一緒に入所できる特別養護老人ホームだ。現在、犬7匹、猫9匹が利用者とともに生活している。法人では介護が必要になっても以前と同じように暮らせる施設を目指す中で、愛犬・愛猫と最期まで一緒に過ごしたいという高齢者の願いに応えている。

 

◆ペットは家族

 

 10月中旬、要介護4の榊原桂子さん(80)が都内から愛犬のナナちゃんと一緒に入所した。体が徐々にまひしていく病気を患い車いすで生活する。これまで家族から施設に入るよう勧められたが、愛犬と離れたくないと頑なに拒んでいた。そんなとき、家族は同施設を知り、「犬が安心できる場所なら」と榊原さんは入所に納得した。

 

 高齢者の中には入所の際、一緒に暮らしてきたペットを手放さざるを得ない人も少なくない。ペットと離れて生きる気力をなくしたり、離れるくらいなら一緒に死のうかと考えたりする人もいる。ペットは家族も同然で、特に身寄りのない独居の高齢者には何よりも大切な存在なのだ。

 

 そうした切実な思いを見てきた法人では、施設に入るからといってペットとの暮らしを諦めることがないように取り組む。仮に利用者が先立ったとしても犬・猫は施設が面倒をみている。

 

◆衛生面の問題なし

 

 施設は2012年4月に開設。定員100人。4階建てのうち2階で利用者40人が犬・猫と暮らす。犬・猫は室内を自由に動き回り、利用者の部屋に入ることもあればベッドで一緒に寝ることもある。屋上と施設裏にはドッグランのスペースもある。一方、犬・猫が苦手な人やアレルギーのある人は3・4階で過ごし、完全に分断している。

 

 犬・猫は必要な予防接種を受け、フィラリアの予防薬なども投与される。全身を洗って清潔に保っている。若山三千彦理事長は衛生面に関して「人の排泄介護がきちんとできていればペットでも心配ない」と話す。もし猫がじゃれてひっかくことなどがあっても施設が責任を持って対処すると伝えてある。

 

◆職員も犬猫好き

 

 犬・猫と一緒に入所する人はエサ代、医療費、消耗品代を負担するが、世話代はかからない。職員がドッグトレーナーから知識を学んで世話をする。パート職員を1人増やし、犬の散歩はボランティアが手伝ってくれるが、それでも職員の追加業務は発生してしまう。

 

 しかし職員は犬・猫好きなので苦にならない。介護職員の梶ヶ谷和恵さんは自宅で犬を飼っており「ペットは子どもみたい。仕事のモチベーションアップになる」と話す。

 

 法人内で同施設への異動希望を募ったところ多くの職員が手を挙げ、新規採用でも犬・猫がいる中で働けるとして多数の応募があるという。

 

◆症状改善に効果

 

 犬・猫と暮らすことで利用者に笑顔や会話が増えた。ある認知症の利用者は言葉を発せず家族の名前も分からなかったが、かわいがって犬に話しかけているうちに言葉が出るようになり、感情も豊かになった。利用者にとって犬・猫をなでたり抱っこしたりすることはリハビリになり、ドッグランに一緒に行けば運動にもなる。そうした効果も期待して、犬・猫16匹のうち9匹は施設が保健所などから引き取った。

 

 施設で犬・猫を飼うことを横須賀市や市保健所は認めてくれたが、自治体によっては建物の目的外使用、職員の業務専念違反になるとして理解されないという。若山理事長は「高齢者がペットと暮らす〝権利〟を守ってあげたいだけ。結果的に施設で犬・猫を受け入れることで殺処分を少しでも減らすことができれば法人の社会貢献活動になる」と提唱している。

 

犬と施設内を散歩

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