【相模原殺傷事件】容疑者の手紙の扱い焦点 神奈川県の検証委が報告書

2016年1205 福祉新聞編集部
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黒岩知事に報告書を手渡す石渡委員長(左)

 神奈川県立の障害者支援施設「津久井やまゆり園」(相模原市)での殺傷事件をめぐる県の検証委員会(委員長=石渡和実・東洋英和女学院大教授)は11月25日、報告書をまとめた。指定管理者として施設を運営する社会福祉法人かながわ共同会(米山勝彦理事長)に県警が植松聖容疑者の手紙を見せなかった点については、手紙の内容は共同会に伝わっていたと判断。情報は共有されたが、危機意識に温度差があったとした。一方、手紙の存在を県に報告しなかった同会の対応は「非常に不適切」とし、再発防止に向け防犯対策など福祉施設に多くの宿題を課した。

 

 報告書は県警の対応を疑問視した検証委の当初の論調から大きくトーンダウンした。石渡委員長は報告書を黒岩祐治知事に手渡した後、記者会見でその内容を説明した。知事は施設の防犯対策に補正予算を組み、県と指定管理者との情報共有に関する運用指針を改正すると表明した。

 

 知事は7月26日の事件発生直後から「明確な犯行予告がありながらなぜ事件を防げなかったのか。情報共有に問題がある」と述べ、情報がどこでなぜ滞ったのか調べることに意欲を示していた。

 

 植松容疑者が同施設襲撃を予告した手紙を衆議院議長宛てに出したこと(2月)を、事件前に県警や共同会から知らされておらず、事件が起きたことも当日朝の報道で知り、もどかしさを感じたからだ。

 

 最大の検証ポイントは、県警が手紙を共同会に見せなかった点だ。検証委は、県警が夜間の警備を強化するよう共同会に伝えたことや、共同会が「大量殺人のおそれ」などと記した書面などを踏まえ、「必要な情報共有が図れていなかったとは言えない。特に適切でなかったというべき事情は見当たらない」と判断した。

 

 「(非現実的な内容を含む)手紙を見せることでかえって危険性が伝わらないのではないか」「手紙の送り先が衆院議長であることなどから脅迫などに当たるとは断じにくい」という県警の言い分も報告書に書いた。

 

危機意識に温度差

 

 一方、共同会が手紙の存在を県に報告しなかったことについては、「非常に不適切」と指摘。共同会が県警からの情報を適切にアセスメントし、県に報告していれば、事件の発生や被害拡大を防止できた可能性も否定できないとした。

 

 手紙の受け止め方で県警と共同会の間に温度差があったとの認識に立ち、報告書は、今後の対応策として①福祉施設における危機管理対応チームの設置②指定管理者が県に相談しやすくなる仕組みづくり③県を含む関係機関の間で情報共有の在り方を協議する場の設置④福祉施設の安全確保のための指針づくり─などを挙げた。

 

 検証委は9月21日に初会合を開いた。会合はすべて非公開。県内の知的障害者施設の経営者、施設入所者の保護者会連合会、防犯の専門家、弁護士の計5人が第3者として委員に就いた。共同会、県警生活安全部、相模原市健康福祉局の幹部も出席した。

 

石渡委員長会見の要旨

 

 私個人としては報告書に書いた主要課題のうち、「障害者への偏見や差別的思考の排除」(福祉施設で働く職員の人材育成、障害者への偏見や差別的思考が社会に拡大することを防ぐ取り組み)が非常に重要だと思ったが、十分議論を尽くせなかった。植松容疑者は決して特異な存在ではない。優生思想だとも言われる容疑者の発言は個人の問題ではない。そういう意識を持たざるを得ない社会状況に踏み込んでいかなければ根本的な解決にはならない。この報告書は誰かの責任を追及するものではない。かながわ共同会が障害者施設の運営に努力を積んできたことは評価されている。

 

 

 

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