移住で人生のリスタートを ひとり親家庭を支援する自治体の狙い

2016年1212 福祉新聞編集部
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長野県須坂市の職員(奥)から説明を聞く親子

 ひとり親家庭に移住を呼び掛ける自治体が増えている。ひとり親が苦労しがちな経済面、仕事と子育ての両立などに対し、自治体が就労や住居の支援、養育費の支給などで支える。地方では人口減少や労働力低下に歯止めをかける狙いがある。今年10月には実際に取り組んでいる10自治体が初めて集まり情報交換会を行い、合同で移住相談会も開いた。

 

島根・浜田市が先行

 

 2015年度から全国に先駆けて取り組む島根県浜田市。それまでの定住支援策は若者や定年後のUIターンが中心だったが、ひとり親家庭に着目した。介護施設で働くことを条件に家賃補助、引っ越し代補助、中古車の無償提供、1年の研修後に奨励金100万円支給など手厚い支援メニューをそろえた。ひとり親家庭支援と介護人材確保を組み合わせたアイデアは国から地方創生の一環としても注目される。

 

 同市では半期ごとに希望者を募る。事前相談、施設見学・面談、就労体験、審査を経て1年間研修生として働く。現在は4期目に入った。ソフト面からも生活不安に寄り添う相談員を配置したり、移住者同士が集まる会を開いたりして支援する。これまで1期3人、2期3人、3期2人の計8人が移住した。

 

 同市の特別養護老人ホームあさひ園(社会福祉法人旭福祉会)では2人が研修生として働く。神奈川県から移住した女性(50代)は介護の仕事は未経験だが、「前向きに仕事に取り組み早く覚えようという気持ちが伝わってくる」と岡﨑浩明施設長は評価する。

 

 この女性は小学3年の子どもと法人の職員住宅に住む。初めての土地での不慣れな生活や市への研修報告などがあるため、今は夜勤が免除されている。

 

 夜勤に関して市はファミリーサポートセンターの利用補助を拡充して対応しているが、まだ不十分とされる。課題は残るものの岡﨑施設長は「他産業も人手不足の中で介護に特化してもらえるのはありがたい」と話す。

 

見えてきた課題

 

 10月上旬に行われた情報交換会では各自治体が現況を報告した。参加したのは北海道幌加内町、青森県弘前市、長野県、同須坂市、同青木村、新潟県、三重県鳥羽市、島根県浜田市、同松江市、大分県国東市。

 

 浜田市のように介護に絞って手厚い支援のある自治体もあれば、既存のひとり親家庭支援メニューの中で対応する自治体、子どもの奨学金にも力を入れる自治体などがある。自治体の人口規模、住宅事情、雇用情勢などによってまちまちだ。

 

 移住希望者は自治体のホームページやアンテナショップなどで情報を知り、実際に現地に行って自治体職員の案内で地域を回り生活環境を確認したり、仕事や住居などの支援内容の説明を受けたりする。地域の雰囲気を肌で感じることが大事になる。

 

 ただ、数日間現地を見て話を聞いただけでは移住を決断できないことも多い。そのため、受け入れ自治体が希望者の気持ちに寄り添い、家庭の事情などを把握しながら長い目で対応することが求められる。途中で辞退者が出ないよう、ミスマッチをなくすことも肝要だ。

 

 移住希望者自体がまだ少ないという課題もある。自治体はパンフレットなどを作成したり、母子支援団体に声を掛けたりもしている。話を聞きに来る希望者は熱心で、地方で頑張りたいという意欲もあり、自治体関係者は「ニーズはあると感じる。情報が届いていないだけ」とみる。

 

 また、移住と在住のひとり親家庭間で支援内容に差が生じる問題もある。支援の手厚い浜田市は「介護人材の確保のため」と説明するが、納得は得られず、在住のひとり親家庭への支援も拡充する方向で検討している。

 

 情報交換会で浜田市の砂川明・地域政策部長は「事業はまだ十分に整備できていないので、自治体間でメリットのある関係を築ければと思う。できれば内閣府の地方創生交付金を共同で申請したい」と呼び掛けた。

 

自治体の情報交換会も開かれた

自治体の情報交換会も開かれた

 

初の合同移住相談会

 

 自治体合同の移住相談会は10月に大阪と東京で開かれた。

 

 東京会場に千葉県から来た女性(30代)は現在、派遣社員として働くが、経済的に厳しく心理的にも安定した生活を求めている。既に長野県青木村に見学に行った。「田舎は環境が良い。胸を張って生きたい」と言う。現在デイサービスで働く川崎市の女性(30代)は来春に子どもが小学校に上がるタイミングでの移住を目指す。「介護の仕事にやりがいを感じているが、夜勤がネック。昼間に働きたい」と言う。

 

 樋口和広・ふるさと島根定住財団事務局次長は「移住者には良いリスタートになり、地方は子どもが来てにぎわう。双方にとって有意義な取り組みだ」と力強く話す。

 

 

 

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