時代に合わない売春防止法 女性を支援につなぐ新法求める動き

2016年1216 福祉新聞編集部
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
新法について児童養護施設、更生保護施設など関係者と議論した(9月8日、救世軍本営・山室軍平記念ホール)
新法について児童養護施設、更生保護施設など関係者と議論した(9月8日、救世軍本営・山室軍平記念ホール)

 売春防止法に基づく婦人保護事業に新法を求める動きが活発になってきた。全国婦人保護施設等連絡協議会(全婦連、横田千代子会長)は今春、「女性自立支援法(仮称)」の骨子をまとめた。女性ゆえの生きにくさを抱えた人に敷居の高い現行制度を改め、早く支援につなげて生き直しを支えることが狙いだ。1956年5月の売春防止法公布から今年でちょうど60年。全婦連は今後、新法の必要性を説明するキャラバンを組み、各地をまわる予定だ。

 

 新法の検討は2015年7月から全婦連プロジェクトチームが進め、今年4月に骨子をまとめた。売春した女性を「要保護女子」という保護の客体ではなく権利の主体とすることが柱。自立に向けて切れ目なく支援できる体制を目指す。

 

 売春防止法第4章「保護更生」に位置付けられた婦人保護事業には、「収容」「指導」といった文言が残る。障害や高齢など他の福祉分野は法改正が進んだのに対し、同法の骨格は60年間変わっていない。

 

 行政の責務も明確でないことから周知は進まず、婦人保護施設の入所者は定員を大きく下回る。施設の廃止も相次ぐ。かといって、支援を要する女性がいない訳ではない。むしろ、生きにくさは見えにくい形で広がる。

 

 

 そのことをよく知るのが、NPO法人BONDプロジェクト(東京都渋谷区)の代表、橘ジュンさんだ。「彼女たちは悩みを打ち明けるまで長い時間がかかり、自分で何とかしようとして問題を深刻にしている」と話す。約10年前から、繁華街をさまよう女性に声を掛け、電話相談や面談につなげてきた橘さんは、自らの活動を「動く相談室」と呼ぶ。体から絞り出すように発せられた生い立ちは貧困、虐待、性暴力被害などさまざまだ。

 

 生きにくさを抱えても頼る人や居場所のない彼女たちは行政の相談窓口を知らず、相談に行く力もない。その点はほぼ共通という。救いを求める先は闇の世界。支配された性が生を脅かす悪循環に陥る女性は後を絶たない。

 

 そんな現状に危機意識を持った東京都荒川区は14年5月、自殺予防相談事業を同法人に委託。区内の駅前ビルに相談室を設けた。「従来、公的な相談機関をあまり利用しなかった層への働き掛け」(同区障害者福祉課)を図り、安心できる居場所を目指すという。

 

161212closeup03

 

 

 面接相談は156件、電話相談は1083件(週3日開室、いずれも15年度)と多くのアクセスがあるこの相談室に比べ、自殺すれすれまで追い込まれた女性にとって、公的な制度の婦人保護事業は遠い存在だ。

 

 婦人保護施設(39都道府県に48施設。そのうち民間は18施設)は第1種社会福祉事業の社会福祉施設である半面、社会の風紀を乱す「転落女性」を処分する施設と見られてきた。

 

 都道府県に必置の婦人相談所が入所措置の権限を持つため、入所対象の捉え方などの対応に地域差が生じる。婦人相談員(都道府県、市区に計1348人。15年4月)の身分も非常勤が多く、キャリア形成しにくい環境にある。

 

 「もっと早く支援につなげたい」−。全婦連が新法を求める背景にあるのは、「婦人保護事業の実態と、支援を必要とする女性たちとの距離を縮めなければ」という思いだ。

 

 骨子を踏まえ、全婦連はキャラバンを設け、「福島県を皮切りに各地でシンポジウムを開く。ロビー活動チームも設けて国会議員に説明して回る」(横田会長)と意気込んでいる。

 

横田会長

横田会長

 

 

ことば

 

 

婦人保護事業=「売春を行うおそれのある女子」を「要保護女子」とし、保護更生を図る事業。婦人保護施設、婦人相談所、婦人相談員を法律で規定する。事業対象者は拡大解釈されてきた。2014年度の婦人保護施設の定員は1293人で、年間平均の入所者数379人(定員充足率は29%)。職員配置基準は定員50人以下の場合、施設長や調理員を含めて9人。「仮に定員いっぱい入所したら職員の手がまわらない」(施設長経験者)と言われている。

 

 

 

福祉関連書籍

 

子どもへの性的虐待 (岩波新書)
森田 ゆり
岩波書店
売り上げランキング: 14,062

 

「赤ちゃん縁組」で虐待死をなくす 愛知方式がつないだ命 (光文社新書)
矢満田 篤二 萬屋 育子
光文社 (2015-01-15)
売り上げランキング: 16,519

 

ルポ 消えた子どもたち―虐待・監禁の深層に迫る (NHK出版新書 476)
NHKスペシャル「消えた子どもたち」取材班
NHK出版
売り上げランキング: 12,785
    • このエントリーをはてなブックマークに追加