【相模原殺傷事件】「第1に考えたのは家族の分裂回避」 やまゆり園家族会長が講演

2017年0203 福祉新聞編集部
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 元職員による昨年7月26日の殺傷事件で19人が死亡、27人が重軽傷を負った、神奈川県立の障害者支援施設「津久井やまゆり園」(相模原市)の入所者家族会「みどり会」の大月和真会長が22日、横浜市内で講演し、約300人が参加した。よこはま福祉実践研究会(代表=田中正樹・田中神経クリニック院長)主催の学習会で約40分間話し、会場からの質問にも答えた。これまで公の場でほとんど話さなかった姿勢から一転し、「こうした学習会で話すのは初めて。今日は皆さんの疑問に答えたい」とした。

 

 大月会長の長男は自閉症で言葉を発することができず、2000年4月に同園に入所。事件当日は襲撃されなかったホームにいて無事だった。大月氏は15年4月、会長に就いた。家族会の会員は172人で、毎月の定例会の出席率は約60%。

 

 会場からの質問への回答を含む概要は次の通り(注・当日話した順序はこれと異なる)。

 

事件当日

 午前5時半ごろ、家族会の元役員から悲痛な電話が入り、私は6時ごろ園に着いた。消防車、救急車などでごった返していたが、強引に園に入ると、入倉かおる園長が立ちすくんでおられた。私は犯行のあった部屋をそれぞれ見た。命をなくされた方がおられ、ポツンと呆然自失の職員がいた。自宅には12時すぎに戻ったが、その日のうちに取材の要望が5件あった。これでは(私の)家族が持たないと思い、翌日、弁護士に報道対応を委任した。

 

 私は13人のご葬儀に顔を出させて頂いた。ご遺体はどのお顔も非常に穏やかだった。まるで障害がなかったかのような顔をして旅立たれたのを見て、ある意味、安堵した。

 

分裂回避

 

 事件の日を境に、私の毎日は園のことになった。第一に考えたのは「家族が分裂しないように」ということだ。亡くなった人、重傷者、軽傷者… それぞれの家族は立場が違う。

 

 現在、入所者は園と厚木市内の分園と県立の他施設に散らばっている。園を離れた人は大変苦労している。家族会として何かを言う時は心を合わせなければならない。そのことに腐心している。

 

 事件から半年たち、「今どう思うか」と問われると、「よくここまで来れたな」というのが率直なところだ。

 

 このような事件を防ぐには、園と職員の間に第三者が入る仕組みが必要だと強く思う。仕事の悩みを抱えた職員を孤立させないことが大事だ。この点は県への要望書に私の独断で入れた。

 

匿名

 

 事件当日、ご遺族から「氏名を公表しないで」という意見が2、3あったが、家族会でそれを取りまとめた事実はない。後に、県警から「公表しない」という話があった。

 

 なぜ匿名になったかと言えば、まず、亡くなった人の6~7割はご遺族が兄弟姉妹だ。親御さんがご健在という人は本当に少ない。商売をしている兄弟姉妹もいて、氏名が表に出ると困るということ、報道がすさまじいことなどが背景にある。

 

建て替え

 8月に入り、黒岩祐治知事が「改修か建て替えかどっちかで進む」と言われた。私は建て替えしかないだろうと思って家族に意向調査し、建て替えの要望書を県に出した。建て替え後の定員は、私は今と同じ160人を希望する。待機者が多くいるからだ。

 

 建て替えを決めた県の方針に対し、公聴会で異論があったのは承知している。私たちが求めているのは、この事件で棄損した施設を早く元通りにすることだ。改修だけではこの先、知的障害者のためにならない。私はみんなにいいものを残したいという気持ちなのだが、それがなかなか伝わっていない。

 

本人の意向

 建て替えに関連し、入所者本人の意向を確認すべきだという意見があるが、実際には難しい。自宅に帰れない人に「おうちに帰りたいか」と聞くのは非常に酷だ。私だったら心が砕けてしまう。

 

 建て替えが終わるまでは横浜市内の仮の施設に移るが、本人の意向を確認したのかと言われると、できる状況ではない。いやが応でも行かなければならない。そういう現実も見てほしい。

 

職員

 津久井やまゆり園の元職員が起こした事件だが、家族目線で言えば、これだけの良い施設はなかなかない。非常に支援の厚い、職員も優秀な、日本の中でも誇れる施設だと思っている。
 私は津久井やまゆり園が県営から民営になるときに反対した。県や国が園に対し責任を持たなくなると思った。
 しかし全然違った。かながわ共同会に10年超やってもらったが、入所者をよく外に連れて行ってくれる。社会との接点もできてきた。「なぜこんなに」と思うほど職員は熱心にやってくれている。それだけに今回の事件が悲しくて悔しくて仕方がない。

 

大月和真会長

大月和真会長

 

 

 

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