【相模原殺傷事件】やまゆり園の建て替え構想、夏に延期 「入所者の意向確認すべき」と異論続出で

2017年0207 福祉新聞編集部
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
事件から半年たった1月26日、集会は障害者らでいっぱいになった

 昨年7月に殺傷事件が起きた神奈川県立の障害者支援施設「津久井やまゆり園」(相模原市)の建て替えについて、県は1月27日、基本構想の策定を夏まで延期すると発表した。今年3月末までに作り、2020年度の建て替え完了を目指していたが、1月10日の県主催の公聴会で異論が噴出したことなどを受け、県の障害者施策審議会に特別な部会を設けて議論する。県は「昨年9月に決めた建て替え方針を白紙撤回したわけではない。多くの意見に耳を傾けたい」としている。

 

 10日の公聴会では、県が現在地で最大80億円かけて建て替えることをめぐり「時代錯誤だ」「入所者本人の意向を確認すべきだ」といった異論が噴出。県は意見を聞くだけで回答せず、改めて議論する場を設けるつもりもないとした。

 

 公聴会での異論を受け、黒岩祐治知事は「私が強引に建て替えを決めたかのように思われ心外だ」と態度を硬化させたが、知事のこの発言が批判を招いたこともあり、再考を迫られた。知事は全面的な建て替えにはこだわらないとした。

 

 自分自身の言葉で延期の理由などを説明した動画も公開した。公聴会での異論を一定程度聞き入れた格好だが、今回の延期は「もう少し議論しよう」という域を出ず、方針転換とまでは言えない。

 

 県議会は30日、臨時に厚生常任委員会を開催。5時間超審議したが、県は「これまでの方針を白紙撤回したわけではない」(障害福祉課)と強調した。

 

 設計会社に委託した基本構想の策定作業は中断せず進めるとし、津久井やまゆり園の入所者約100人が横浜市内の県立施設に仮入所する期間(今年4月から約4年間)は延ばさないとした。

 

 短期入所を含め、現在定員160人の同園を取り壊す費用も17年度予算に盛り込む方針。障害者施策審議会の部会では入所者の意向を確認する具体的な方法などを議論する。それを踏まえ夏に基本構想を固める。

 

 延期の背景には、障害者団体だけでなく、入所施設を運営する社会福祉法人なども大規模施設の再建に反対したことがある。

 

 車いすで生活する鈴木治郞・神奈川県障害者自立生活支援センター理事長や障害者施設職員らが呼び掛けた実行委員会は26日、横浜市内で集会を開き、約300人が参加した。主に建て替え問題を議論した。

 

 障害者支援施設やグループホーム(GH)を運営する社会福祉法人同愛会(横浜市)の高山和彦理事長は、津久井やまゆり園入所者の希望に応じて横浜市内の事業者が受け入れる考えを表明。「一番苦しんでいるのは同園の職員だろう」と話し、同園の職員や行政機関を交えた委員会を設け、話し合うことが必要だとした。

 

 集会終了後の同日夕刻、実行委員会の代表団は県庁を訪れ、入所者の希望を丁寧に聞き取って計画を作るよう県保健福祉局幹部に申し入れた。

 

 10日の公聴会でも県知的障害施設団体連合会が、津久井やまゆり園の定員を減らし、県全体で分散整備するよう主張。GH運営者の団体も、県内の事業者が入所者を受け入れていく仕組みづくりをすべきだとした。

 

 23日には全国手をつなぐ育成会連合会も「140人規模の施設が存続する限り、県内各地から利用者を集め、出身地域との関わりを薄める装置として機能してしまう」とする声明を発表。県に対し、建て替え方針の再考を求めた。

 

 26日の集会の実行委員会の鈴木理事長は、県が基本構想の策定を夏に延ばすことについて、28日の都内での講演で「知事が障害者の言うことを聞き入れてくれたのはうれしい。これだけ短期間で事態が急変するのは珍しい」と話した。

 

 一方、建て替えを求めていた津久井やまゆり園の家族会は31日、本紙の取材に「私たちはあくまでも建て替えを希望する。その気持ちを皆さんにより一層ご理解いただく時間をもらえたと受け止めている」(大月和真会長)と回答した。

 

 

 

福祉関連書籍

 

ADHDでよかった (新潮新書)
立入 勝義
新潮社
売り上げランキング: 616

 

障害者総合支援法 事業者ハンドブック 報酬編〔2016年版〕
中央法規出版
売り上げランキング: 4,693

 

相模原事件とヘイトクライム (岩波ブックレット)
保坂 展人
岩波書店
売り上げランキング: 8,308
    • このエントリーをはてなブックマークに追加