社会福祉法人風土記<20>児童養護施設 讃岐学園 下 「つなぎ遍路」に挑む子どもたち

2017年0302 福祉新聞編集部
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58番札所「仙遊寺」(愛媛県今治市)に到着した子どもたち(2015年8月)

  「泊まりに行こうか」

 

 夏や冬の長い休み、身内の元で過ごせない子に職員が声を掛けた。すぐに乗ってきた。

 

 それをきっかけに2011年夏、讃岐学園(高松市)の子どもたちの「お遍路紀行」が始まった。

 

 世をすねた青年がひとり遍路道を行く。その横を小学生の女児の自転車が通り過ぎた。50メートルほど先で自転車は止まり、Uターンしてくる。

 

 

 「お遍路さん、これどうぞ。お接待です」

 

 女児は買ってきたばかりのミカンを1個袋から取って差し出す。

 

 「ありがとう」

 

 青年は心遣いに人のぬくもりを感じ、心を開いていく。

 

 四国遍路にこんなエピソードは枚挙にいとまない。

 

遍路は楽しい

 

 暑い盛りや北風を突いて日帰り、あるいは遍路宿に泊まっての1泊2日の行程だ。希望者を募り、人数もメンバーもバラバラ。順路など気にしない「つなぎ遍路」である。1番札所の霊山寺(徳島県)からスタート。この5年半余で徳島県、香川県を〝制覇〟、全長1400キロの踏破を目指す。アイスクリームやせんべいのお接待を受けたり、道に迷ったり。

 

  「疲れたけど、また行きたい」と2日間で計約30キロ歩いた小3女児(9)。昨夏まで2年参加した小6女児は「よそから来た人と『暑いですね』とか話したり、景色を眺めながらで、楽しかった」と話す。次はいつ? といった声も出るという。

 

 学園のモットーは弘法大師の願いである「済世利人」(世を救い、人に利益を)。社会も人も、前進し変わるには、互いに己を開くことから始まる。前回紹介した故・阿部龍汪園長時代だが、地域との交流を図るため園内に温泉を掘り、園庭の小水路に流して近所の子どもたちへ足湯の遊び場として開放している。元教員らによる学習ボランティアを迎えているほか、2年前からは週末、香川県立高松工芸高校の國木健司教頭(55)=日本史=が趣味の技を生かし、園地で野菜づくりの指導にあたっている。

 

  「職員に甘え、内弁慶になりがちの子が多い。できるだけ外のスポーツクラブなどへ参加させるようしています」と小中学生6人の小規模グループ寮の小屋敷由花主任(56)。ともかく自立を促す。「それと日々笑顔で過ごすことですね」。

台所仕事をしながら、学校から帰った子どもとおしゃべりをする小屋敷由花・小規模グループ寮主任

台所仕事をしながら、学校から帰った子どもとおしゃべりをする小屋敷由花・小規模グループ寮主任

 

課題は山積

 

 とはいえ、人の成長(讃岐学園)と老い(「弘恩苑」など三つの特養)を事業の両輪とする社会福祉法人(弘善会)の課題は尽きない。とくに少子化や里親制度の広がりの中で入所児童が47人(定員65人)と減っている経営は悩みのタネ。職員のクビは切れない。

 

 間島康善事務長(61)は「町中の民家に少人数のユニット施設を設ける方向を国は打ち出してますが、園内に小舎をいくつか造り、少人数で家庭的に暮らす方が効率的かもしれないし、対応は可能では」とみる。

 

 高齢者ケアについても新たな取り組みが求められつつある。法人常務理事でもある弘恩苑の鎌田真雄施設長(55)は、「職員のレベルアップを図るため、今年度から外部の看護師を講師に認知症研修に着手した。特養3施設のうち一つは建て替え、一つは修繕の時期に入っており、その費用のねん出やケアハウスの特定施設化などコストのかかることばかり」とハード、ソフト両面で先を見据える。

 

鎌田真雄・弘善会常務理事(左)、間島康善・讃岐学園事務長

鎌田真雄・弘善会常務理事(左)、間島康善・讃岐学園事務長

 

 弘善会に限らず、社会福祉法人全体が厳しいかじ取りを迫られる時代を迎えつつある。

 

 

【横田 一】

 

 

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