社会福祉法人風土記<21>みねやま福祉会 中 医院は廃業、乳児保育所を開設

2017年0315 福祉新聞編集部
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ゆうかり乳児保育所

 1952(昭和27)年に組織を財団法人から社会福祉法人「峰山乳児院」に変更、3年後に「幼児寮」(児童養護施設)を併設、1965(昭和40)年に乳児院を病院隣りに移し、1972(昭和47)年には幼児寮が鉄筋コンクリート3階建てとなり乳児院横に移転した。

 

 創設者・櫛田一郎(1921〜1974)は「管理より生活を」「私は、施設の子どもたち、皆さんと皆さんの家族を愛します。皆さんもこの子どもたちを愛してください」と折に触れ職員に語っていた。

 

 医師と乳児院長として多忙を極めるが、文化人でもあった。峰山町に音楽協会を設立し、自らもバイオリンを奏でた。

 

 ある日、息子2人に「病院は誰が継いでもかまわないが、乳児院はそうはいかない。福祉(事業)は私の目に適(かな)う人にやってもらう」と告げた。

 

 実は、この少し前のこと。高校生の息子2人は自分たちの進路について話し合っていた。一つ年上の兄・玄さん(1950〜)が弟・匠さん(1951〜)に「俺は、音楽の道に進みたい。ここはお前に継いでほしい」と言っていたのだった。

 

 その後、兄は音楽の道へ進み、弟は医者を目指して上京するが、匠さんは今も「父に福祉は…と言われた時、自分たちは父の目に適っていないのだと強く感じた」と、昨日のことように覚えていると言う。

 

53歳の若さで

 

 1974(昭和49)年5月、一郎が急死。まだ53歳という若さだった。次男の匠さんは峰山町に戻り、福祉の道に進むことを決意する。「いつか親父の目に適ってやる。そんな思いでした」と当時を振り返る。

 

 翌年4月、京都市内の大学に入学し福祉を専攻するが、職員となって法人を支えていくのはまだ先のこと。医院は廃業、一郎の妻・邦子(1927〜1998)が乳児院の院長を継ぐ。地域の母親たちから「保育所をつくってほしい」という要望が強く寄せられていた時でもあった。

 

 一郎逝去の翌年10月、医院診察室などを改築、2階にホールを増築し「ゆうかり乳児保育所」が開設。乳児保育所開設は、地域に根差した乳幼児の育成に心血を注いできた一郎の遺志でもあった。「ゆうかりは他の木より2倍余の酸素を出す。公害日本には最適の木」と一郎が大切に育てていた木でもあり、施設の名前はそこから命名した。

 

 「邦子院長は、悲しみを乗り越えて、持ち前のパワーで子どもたちの処遇向上のため、次々とアイデアを出し実行されていきました」(稲葉慶子さん、昭和39年〜平成12年勤務)。

 

 そんなころ問題は起きた。施設を出て養父母に育てられていた小学校4年の女の子が、人のものを平気で盗むとして学校で問題になったのだ。担任の教師は「乳児院の子育てに問題があると思います」「すべて共同の物で育てられ、個人の物がないので、取るという意識が全くないのです」と指摘。その通りだった。女の子は人の物を取っても平気、また自分の物を取られても平気だった。

 

 職員の業務は多忙ゆえ業務改善等について遠慮しがちでもあったが、邦子院長はチャンスととらえ職員と共に「物の個別化」に取り組む。

 

 字の読めない乳幼児にも分かるようにマークを作るなど試行錯誤の末、「物的個別化」は確立されていった。

 

特養の開設

 

 「子どもにとって何が必要か、何が幸せにつながるか」を常に考え行動することは設立当初からの法人の基本であり、邦子院長は「いつか、子どもたちと高齢者が一緒に過ごせる生活の場をつくっていきたい」という夢を抱いていた。

 

 そして夢の第一歩・特別養護老人ホーム「はごろも苑」が1994(平成6)年に開設。さらに2年後には障害児通園施設「さつき園」が開設されるが、1998(平成10)年、夢の序章の幕が開き始めたところで邦子院長は昇天、71歳だった。

 

 平成の初めから法人でボランティア活動を行っていた宮津市の府立宮津高校(一郎の母校)の生徒たちは、邦子院長の人柄と功績をしのび、彼女をモチーフに「生命〜その愛」と題した巨大レリーフを寄贈した。生徒40人が各自1枚彫り、それらを組み合わせたもので現在も幼児寮に飾られている。

 

高校生のボランティアから寄贈されたレリーフ

高校生のボランティアから寄贈されたレリーフ

 

 飾られ輝いているものはもう一つある。現在、法人は「みねやま福祉会」と名を変えているが、創設者夫妻のことば「私達の願い」を忘れないように、乳児院の入口には原点「社会福祉法人峰山乳児院」の看板が今も掛かっている。

 

【荻原芳明】

 

 

 

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