増える重症児施設の短期入所 旭川荘の末光理事長による連載(中)

2017年0315 福祉新聞編集部
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呼吸器を装着する重症児もいる

 現在、全国の重症心身障害児は推計4万人余りと、50年前の約2・5倍に増えています。入所者のうち「大島の分類1〜4」に該当する「狭義の重症児者」は、1万5000人程度です。したがって、入所の約2倍近い、少なくとも2万6000人が在宅で暮らしていることになります。

 

 実は、公法人立の重症児施設は、在宅の重症児者支援に1970年代前半から、一貫して努力してきました。

 

 社会福祉法人旭川荘が運営する重症児施設「旭川児童院」では、71年に「心身障害児(者)巡回療育相談事業」を全国に先駆けて始めました。児童相談所のケースワーカーと共に、旭川児童院の医師や保育士などが一軒一軒、自宅を訪問し、在宅で暮らすための助言を行うものです。

 

 77年から「緊急一時保護入院」(のちの短期入所)を、89年から「重症児通園モデル事業」を全国5カ所の一つとして手がけており、のちに制度化されました。

 

 このうち「短期入所」は、全国的に見て大幅に利用が増え、公法人立だけでも年間12万日を超えています。

 

 しかし、短期入所専用ベッドの不足と、特に呼吸管理などが必要な「超重症児」「準超重症児」といわれる一群の子や緊急入所への対応面での困難が、新たに顕在化しています。

 

 旭川児童院を例に挙げると、年1500件、延べ4000日に上ります。日々の入退所は急性病院に似ています。岡山県では一般病院や老人保健施設が医療型短期入所事業所の指定を受けており、より身近なところでの短期入所の利用が拡大されているのです。

 

 しかし、「超重症児」「準超重症児」と言われる人の受け入れは、ほかの機関では難しく、重症児施設の役割ではないかと思います。短期入所利用の理由では近年、母親の仕事のための利用が多くなっています。

 

 短期入所は元々、家族の都合を優先し、本人も病状が安定した状態を前提条件にしてきましたが、現実はそうでありません。

 

 医療ニードが顕著なケースや、病状が急変し各種の医療処置などが必要な場面が、日常茶飯事になりました。

 

 ところが、本来の短期入所ではそんな事態を予想していなかったため、診療報酬面での制約があり、受け入れれば受け入れるほど、赤字を余儀なくされる問題が起きています。2016年の診療報酬の改定で、一定の医療処置等について、診療報酬が算定されることとなりましたが、十分ではありません。

 

 このほか旭川荘では、従来の重症児者のための入所と外来に加え、13床に上る「Post NICU」や在宅ケアの訓練をする親子病床、在宅者のための入院病床、そして「医療対応の短期入所」などを進めています。

 

 「Post NICU」についても課題に直面しています。それは1日1人10万円に上る「NICU」の診療報酬に比べて、半分以下であるということです。このため、経済的理由から、人的対応の整備が難しいのです。

 

 近年は知的障害者施設からの入所も増えつつあります。障害者の高齢化が進む中、医療ニードが高いケースの受け皿としての役割は、今後大きくなるはずです。

 

末光茂・社会福祉法人旭川荘理事長

末光茂・社会福祉法人旭川荘理事長

 

【略歴】1942年生まれ。岡山大学医学部卒業。全国重症心身障害日中活動支援協議会長、日本重症心身障害福祉協会参与、全国重症心身障害児(者)を守る会理事、日本発達障害学会理事なども務める。

 

 

 

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