<措置入院改革> 精神保健福祉法、治安優先の改正に反対

2017年0404 福祉新聞編集部
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左から、富田三樹生・多摩あおば病院長、池原毅和・弁護士、長谷川利夫・杏林大学教授

 神奈川県立の障害者支援施設「津久井やまゆり園」(相模原市)で昨年7月に発生した殺傷事件の再発防止策とされる精神保健福祉法改正案に関連し、反対集会が3月24日、参議院議員会館で開かれた。措置入院から退院した人のフォローを強化する改正内容を、弁護士、精神科医らが「治安維持を目的としたものだ。到底許されない」と批判した。

 

本来の目的に合わず

 

 病棟転換型居住系施設について考える会(連絡先=長谷川利夫・杏林大教授)の主催で、約100人が参加した。精神障害作業療法学が専門の長谷川教授は、「改正案の趣旨を読むと、同法を治安目的に用いている。本来の法の目的と合致しない」と憤った。 

 

 退院後支援計画を作るための個別ケース会議の参加メンバーについて、厚労省の説明資料が「必要に応じて本人も参加する」としている点には「本人抜きで支援計画を作ることはあり得ない」と不快感をあらわにした。

 

管理の思想は危険

 改正案のベースとなった厚労省の再発防止検討チーム(座長=山本輝之・成城大教授)が昨年12月にまとめた最終報告に対し、日本精神神経学会法委員会は1月、「強い違和感」を表明したが、同委員会委員長の富田三樹生・多摩あおば病院長(東京)は「再発防止検討チームが組織された枠組みがそもそも問題だ」と政府の姿勢を批判した。

 

 特に事件直後、安倍晋三首相が措置入院の見直しを指示した点を問題視し、「今回の事件の本質はヘイトクライムだ。改正案はそれを隠ぺいするために行政が措置入院患者を一元管理するものであり、極めて危険だ」と警鐘を鳴らした。

 

患者の自尊心奪う

 

 「改正案は刑罰国家化を象徴している」と批判したのは、精神医療に詳しい池原毅和・弁護士(東京アドヴォカシー法律事務所)。一般の入院・通院患者にはお金をかけず、社会に迷惑をかけた人には治安維持のためにお金をつぎこむ構図が鮮明だと解説した。

 

 また、措置解除後に通院を強制された人の治療効果が高いとする海外の研究報告はなく、むしろ本人にぬぐいがたい心の傷を負わせると主張。患者が「良い患者」を演じないと治療が終わらない抑圧的な環境に置かれ、自尊心が奪われる点で改正案は問題だとした。

 

 このほか精神障害の当事者からは「医療保護入院した時、水を飲もうとしたらトイレの水を飲めと言われた。改正案に入院患者の権利を擁護する仕組みがないのは問題だ」「改正案により措置解除後のフォローを強化すると、障害者同士で監視し密告するような事態も起こりうる」といった声が上がった。

 

 昨年7月の殺傷事件では犯人が事件前に措置入院していたが、措置解除後の通院は途絶えた。この点を重くみた厚労省は2月末に国会提出した精神保健福祉法の改正案で、すべての措置入院患者に対し、退院後の支援計画を作ることを都道府県などに義務付けた。 

 

 

 

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