「世界に誇る日本の財産」 民生委員制度創設100年で新会長にインタビュー

2017年0512 福祉新聞編集部
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得能金市・全国民生委員児童委員連合会長

 民生委員制度が、その源とされる大正6年の済世顧問制度創設から100年を迎えました。昨年12月に3年に1度の一斉改選があり、委嘱された約23万人が全国各地で活動しています。今年3月に全国民生委員児童委員連合会の会長に就任した得能金市氏に、これまでの活動の総括、直面する課題、今後の意気込みなど伺いました。

 

         

 

――100年を迎えた民生委員制度の意義をどう捉えていますか。

 

 貧困者を救う済世顧問制度として始まり、社会情勢が変わっても連綿と存続してきたのは、あらゆる人のよき隣人でありたいという先達民生委員の強い思いがあったからです。

 

 よき隣人として地域の身近な相談役であり見守り役であったからこそ、住民は他人には言えない相談事を民生委員に話してくれた。それが100年続いてきた根幹にあります。

 

 「民生」とは、国民の生活・生計という意で、民生委員は国民の暮らしの安定向上に努めています。その民生委員があまねく地域にいることは人的なセーフティーネットになっているといえます。

 

 ――地域の課題にどう対応してきましたか。

 

 民生委員の身分は非常勤特別職の地方公務員ですが、無報酬のボランティアとして活動しています。住民の困り事が解決した時は一緒に喜び合えることが活動の何よりの源泉であり、お金に換えられるものではありません。

 

 ボランティアとはいえ、守秘義務があるからこそいろいろな調査活動もでき、普段の住民との会話から聞こえてくる課題を代弁して行政に働き掛けることもできるのです。

 

 昭和43年の在宅ねたきり老人実態調査では、13万人(当時)の民生委員が聞き取り調査を行い、70歳以上のねたきり高齢者が20万人以上いることを明らかにしました。当時は介護のことはまだ周囲に話しづらく、家庭内の問題とされていましたが、調査で高齢者介護の問題を可視化し、それが在宅福祉の充実につながりました。

 

 ほかにも介護者実態調査から国のショートステイの補助事業創設につながったり、身近な地域では通学路の見守り活動からスクールゾーン設置につなげたりもしました。

 

 また共同募金などの民間社会福祉活動の中核的な役割も担ってきました。

 

 ――社会が多様化し課題も複雑になっています。

 

 虐待や孤立死、悪質商法被害など、さまざまな生活課題が出てきています。民生委員は行政の協力者ですが、あれこれ任されてもすべてには対応できませ。それだけに民生委員の活動環境の整備が必要だと考えます。民生委員がやるべきことは何か、できないことは何かを整理する必要があると思います。

 

 基本的に行政は、助けを求めてきた人にしか対応できません。一方、民生委員は自ら地域を歩いて情報を把握し、問題があれば救い上げています。そうした民生委員にしかできない活動に大いに力を注げるようにしていきたいと思います。そこにこそ民生委員の存在価値や役割があるからです。

 

 ――なり手が不足している問題もあります。

 

 昨年の一斉改選時の定員充足率は96・3%で、欠員が拡大しており、危機感を持っています。要因の一つが民生委員は大変というイメージがあることです。現状では民生委員でなくてもできる活動に労力を使わざるを得ない状況があることも一因です。

 

 1期(3年)で辞めてしまう人が多いのも課題です。最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、次第にフットワークよく動けて目的が捉えられるようになります。ぜひ3期9年は続けてほしいと思います。そのために、民生委員の活動環境の整備を行政に提起し、先輩民生委員によるサポートや研修の充実にも取り組みます。

 

 ――民生委員の存在が知られていないとの指摘もありますが。

 

 もともと民生委員は黒子的な存在です。周りに言えない家庭内や個人的な悩み、課題の相談に乗り、行政や専門機関などにつないで解決してきました。民生委員に相談すればつないでくれるということを広めていきたい。そういう存在が地域にいると分かれば住民の安心や安全につながるはずです。

 

 ――100年の記念事業について教えてください。

 

 7月に都内で1万人規模の式典を行います。民生委員23万人による住民課題の一斉調査結果も集計中です。5月12日の「民生委員の日」などには各地で啓発活動や一日民生委員体験なども行います。また記念切手も発行されます。地域や住民のさまざまな課題に対応していくため、新たな活動強化方針も打ち出します。

 

 ――今後に向けて抱負をお願いします。

 

 100年続いた制度は世界を見渡してもあまりないと思います。日本の財産として世界に伝えられたらと思います。

 

 国が掲げる「地域共生社会」のための「我が事・丸ごと」の考え方は民生委員活動そのものです。地域の「つなぎ役」としてしっかり対応していきます。

 

 私たちの座右の銘である「民生委員信条」は昭和26年に作られ66年がたちますが、現在も変わらぬ活動の基本が記されています。民生委員への信頼のためにも今後も大事にしていきます。

 

 100年続いた実績と感謝の気持ちをもって、国民の安心と安全のために笑顔で取り組んでいきます。

 

 

【とくのう・きんいち】今年3月に会長に就任。昭和22年生まれ。富山県在住。1級建築士で設計事務所代表。平成7年に47歳で民生児童委員になり、在任21年、8期目。富山県民生児童委員協議会長。自宅付近で孤立死 した高齢者の第1発見者になった経験も。

 

 

 

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