家を借りられない高齢者 社会福祉法人が転居と生活相談セットで支援

2017年0602 福祉新聞編集部
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転居したばかりの山﨑さん(左)宅を訪問した吉田さん(中央)と北中さん

 奈良県天理市にある1973年創設の社会福祉法人やすらぎ会(前田正一郎理事長)は、高齢者の転居を支援し、その後の生活相談も行う事業を無料で行っている。かねて高齢者の住まいの支援を模索していた同会。植田誠・特別養護老人ホームやすらぎ園施設長は「社会福祉法人としての実績や機能を生かし、地域の社会資源とつなげながら取り組んでいく」と意欲を語る。   

 

 「こんにちは。やすらぎ会です」。この日、職員の吉田真哉さんと北中桃代さんは同事業で支援し、4月に転居したばかりの山﨑修さん(73)宅を訪ねた。

 

 山﨑さんは数十年前から借家で共同生活を送っていたが、貸し主が亡くなったことから退去を迫られた。現在は無職で要介護1。連絡のつく親族もおらず、知人の世話になっている中で同事業につながった。

 

希望いれプラン作成

 

 吉田さんらは山﨑さんから生活や健康状態、今後の希望などをアセスメント(評価)し、外部の関係者も参加する転居支援委員会を開いて支援プランを作成した。

 

 少し歩行が不便な山﨑さんのため1階の部屋を探し、賃貸契約にも付き添った。公的支援の情報を提供したり生活の困りごとに配慮したりしながら、安心して暮らせるよう支えている。

 

 支援の過程では、ケアマネジャーで介護福祉士の吉田さん、宅地建物取引士資格を持つ北中さんの専門性が生かされている。

 

家主とのマッチング

 

 同事業は厚生労働省の「低所得高齢者等住まい・生活支援モデル事業」(2014年度から3年間)として天理市が同会に委託して始まった。

 

 高齢になるとADL(日常生活動作)が低下したり、自宅が老朽化したりして住み替えの希望が出てくる。生活に困り身寄りのないことから住まいの確保が難しい人も少なくない。それに対し、賃貸住宅では家主が孤立死や近隣トラブルなどを懸念して貸し渋っている実態がある。

 

 こうしたミスマッチを同会が不動産業界と連携して解消する。また国は空き家を高齢者など向けの賃貸住宅として登録する制度も創設した。

 

 同会は訪問入浴サービスや特養ホームなどを運営するが、不動産業界とのつながりはなかったため、吉田さんらは不動産会社の店舗を直接訪ねて協力を要請(現在6社が登録)。自治会や民生委員の集会など400カ所近くに出向いて事業を周知した。今年4月末までの約3年間で38件の相談が寄せられ、山﨑さんを含めて3人が成約に至っている。

 

安心感で生活充実

 

 天理市は人口6万6000人、高齢化率25%(今年3月時点)。大学などの教育機関があり、他市に比べて20代前後の転入出が多く、不動産会社も多い。公営住宅は募集が少なく高倍率のため、転居先としてあてにできない。

 

 そういった地域特性から、同事業の今後が期待される。植田施設長は「当会で社会資源をコーディネートしながら地域で高齢者の暮らしを支える体制をつくりたい」と話す。高齢者の社会参加に地域のサロンを活用したり、学生に引っ越しを手伝ってもらったりするなどの構想を描く。その目標に向け、当面の課題は事業のさらなる周知と不動産会社との連携の拡充だ。

 

 山﨑さんは当初はほとんど会話をしなかったが、転居後は吉田さんらが驚くほど意欲的になり、笑顔も見られるようになった。山﨑さんは「漢字の勉強を始めた。ボランティアをして人の役に立ちたい」と前向きだ。安定した住まいと見守られている安心感が充実した生活に結びついている。

 

 

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