目的もって姿勢ケア 褥瘡予防に効果(島根の特養)

2017年0830 福祉新聞編集部
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安楽な姿勢の保持にクッションは欠かせない

 福祉機器を活用して利用者の褥瘡予防や早期治癒を実現している特別養護老人ホームがある。島根県飯南町の「愛寿園」(吉田元子園長)だ。褥瘡予防・治癒のためにそろえた機器は、利用者の生活の質の向上に大きく寄与。職員の腰痛予防などさまざまな効果を上げている。

 

 社会福祉法人友愛会が運営する愛寿園は、広島県との県境の山あいの町にある定員80人(平均要介護度3・6)の従来型施設。2000年頃から、おむつの随時交換や2時間に1回の体位交換を行うなど褥瘡予防に努めてきた。また、ひどい褥瘡ができた状態で入所したり、病院から退院したりする人が増えた08年頃からは、クッションやバスタオルなどを使った姿勢ケアも取り入れてきた。

 

 しかし、当時の姿勢ケアに科学的根拠はなく、高機能マットレスなど必要な機器も不十分。「その頃は100円ショップのクッションなどをすき間に入れていただけ。何のために、どこに入れるかという目的意識が全くなかった」と、理学療法士(PT)の高垣龍太さんは振り返る。

 

 それが変わったのは、09年に高垣さんが同県内のセラピストの集まりで、高機能クッションや調整機能付き車いすなど機器を使った姿勢ケアを学んだこと。機器の大切さを痛感した高垣さんは、若手介護職員を誘い、広島県で開かれた機器展や勉強会に参加し、そこで学んだ姿勢ケアを実践していった。

 

 その取り組みを後押しするように、吉田園長は11年に厚生労働省の助成金を活用し、居室用の床走行式リフト1台と浴室用天井走行式リフトを導入。12年までの2年間に約1000万円をかけ、(株)タイカの高機能マットレス・アルファプラシリーズ「ソラ」「F」や高機能クッション「ウェルピー」、(株)カワムラサイクルの調整機能付き車いす「KZシリーズ」、移乗ボード・シートなどを整備していった。居室用リフトも2台追加購入した。

 

 機器の導入に合わせ、メーカーの担当者に施設に来てもらい、褥瘡ができる原因や予防方法などを教えてもらったり、高垣さんが講師となって介護職員を対象に研修会を開いたりするなどノウハウの導入・周知にも努めた。

 

生活の質も向上

 

 褥瘡予防のために機器を使い始めて9年。愛寿園は褥瘡があって入所しても早期に治癒でき、皮膚の赤みをすぐに発見して治せる施設になった。それはケアの質が大きく変わったからだ。

 

 ベッド上の姿勢ケアは、個々の身体状況に合わせてマットレスとクッションを選択。エアマットレスは、柔らかく不安定で、緊張や拘縮を生むリスクがあるため、ひどい褥瘡がある場合などに限定して使っている。

 

 また、2時間に1回の体位交換は利用者の安眠を妨げないように、同様の効果がある定期的な圧抜きに変更。クッションも利用者の表情や圧のかかり具合をみて、最も良い当て方ができるようになった介護職員が増えた。

 

車いすの背張りを調整する高垣さん

 

 車いす上の姿勢ケアは、調整機能付き車いすとクッションを使い、個々の希望に添った座位が保持できるように調整。調整は高垣さんの助言を受けたフロアリーダーが主に担当するが、「自走ができる」「食事を1人で食べられる」など利用者や家族の希望を聞いて決めている。以前はずっこけ座りを見ても直そうとしなかった職員が、今は姿勢が崩れる原因を考え、率先して対応するようになった。

 

 ベッドから車いすなどへの移乗は、個々の残存機能を損なわないようにリフトとボードを使い分け。安全・安楽な移乗ができ、拘縮を悪化させずにすむので褥瘡になる人が減っているという。

 

 「褥瘡予防にはベッドや車いす上で無理のない姿勢を保持することが大切。そうすれば緊張や拘縮がなくなり、褥瘡のリスクも減る。すべてのケアはつながっている」と話す高垣さん。高機能マットレスやクッションだけでなく、調整機能付き車いす、リフト、ボード・シートなども褥瘡予防や姿勢ケアのために欠かせないという。

 

 「褥瘡予防のために機器を導入したが、今では利用者の生活の質を高め、職員の腰痛予防にも役立っている」と話す吉田園長。その取り組みからは機器の持つ大きな可能性を感じることができる。

 

 

 

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