10年目のEPA介護人材 候補者は口コミで施設選び

2017年0828 福祉新聞編集部
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意欲的に働くグラビナさん(福寿園)

 日本のEPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者の受け入れは2008年度にインドネシアから始まり、フィリピン、ベトナムの3国と行っている。目的は両国間の経済連携の強化だが、日本の介護人材不足に充てる対応も見え隠れする。受け入れ開始から10年目を迎え、3国内でEPAの仕組みについて理解が進むとともに、受け入れの様相も変わってきた。

 

 「まさか売り手市場になるとは2011、12年ごろには想像できなかった」と話すのは、日本の受け入れ調整機関である国際厚生事業団の矢口浩也・受入支援部長代理。

 

 ここ数年受け入れを希望する日本の施設、求人が増え、16年度の来日人数は過去最多の671人となった。施設関係者からは「EPAの介護人材の奪い合いになっている」との声ももれてくる。

 

 3国のうち日本の施設から人気なのが14年度から始まったベトナム。その理由は、ベトナムの候補者は日本の施設とのマッチング面接の前に日本語能力試験N3以上を取得していることが条件となっており、日本語である程度の会話ができること。マッチング面接後に日本語を勉強するインドネシア、フィリピンの枠組みとは違う。

 

 ベトナムの求人倍率は2・60倍(16年度)。インドネシア、フィリピンもここ数年上昇傾向にある。

 

 

 以前はマッチング面接のために現地に行かなくても採用できたが、今は参加しないと難しい。そればかりか施設案内パンフレット(英語版)の内容を工夫するなどして候補者の興味をいかに引くかが重要になっている。

 

 候補者が日本の施設を選ぶ際に影響を受けるのが、既に来日した先輩などからの口コミ。受け入れが進んできたことから日本の介護の仕事の実情などが知られるようになってきた。 

 

 矢口氏は「母国に仕送りする人が多いので給料の額面よりも手元にいくら残るかを重視している。出費の中でも特に住居費を気にしている」と話す。どの施設がより給料を残せるかといった情報が、来日中でも携帯電話などで母国の友人や後輩などに伝えられているという。

 

 一方、受け入れ施設はどうか。愛知県内で特別養護老人ホームなど18施設を経営する社会福祉法人福寿園(山田浩三理事長)は、介護人材難を解決するには外国人の活用が不可欠として外国人対策室(現グローバル人財課)を設置。EPA候補者も積極的に受け入れている。

 

 09年から累計で候補者をフィリピンから74人、ベトナムから8人受け入れ、現在はフィリピン50人、ベトナム7人が働く。

 

 グラビナ・グレチェンさんは09年にフィリピンから来日。母国の看護師資格を持つが、働く場がなかった。既に日本の介護福祉士国家試験に合格し、車の免許も取った。「ずっとここで働きたい」と意欲的だ。

 

 候補者は一様に親日で、日本人にはない陽気さで利用者と笑顔で接する。施設が温かな雰囲気になる様子をみて受け入れを決めた施設もある。

 

 その中で課題は言葉の壁。意思疎通ができないとストレスになる。グラビナさんも「伝えたいことが伝えられず苦労した」と言う。文化や宗教の違い、仕事への向き合い方などを教えるにも日本語の習熟が大事だ。

 

 施設は候補者を採用するため多額の資金を投資しているが、そのことは候補者には理解されず施設への帰属感も薄い。施設と候補者の温度差があるとの指摘もある。

 

 17年度も3国からの受け入れが進行中。17年4月からは日本の介護福祉士資格を取得した人は訪問系サービスでも働けるようになった。14年度までに355人が資格を取得している。

 

 施設に配属後、半年もすれば戦力となり高い確率で4年間は定着するので求人数が伸びているという見方があり、人材のダイバーシティー(多様性)の観点から受け入れているという施設もある。一方で、候補者は就労研修などがあるためマンパワーにはなりにくいという指摘もある。

 

 今後の課題として矢口氏は、介護福祉士の資格取得後も継続して就労してもらうこと、ミスマッチをできる限り減らすことを挙げる。候補者に選ばれる施設とは「候補者への研修体制がしっかりしており、生活面のサポートも充実していること」と話している。

 

 

 

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