短期入所者も看取ります 負担少ないケアを追求(岐阜の特養)

2017年0927 福祉新聞編集部
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移乗の負担を減らすためベッドごと移動する

 岐阜県山県市の特別養護老人ホーム「椿野苑」(井上祐子施設長)は、入所者だけでなく、短期入所の利用者の看取も行っている。多職種連携による、多彩な福祉機器を使った看取りケアは、当たり前のこととして職員の間に浸透。最善の看取りをしてくれる施設として広く地域からも信頼されている。

 

 椿野苑は、障害者施設や養護老人ホーム、保育所など18事業所を運営する社会福祉法人同朋会(井上悟理事長)が、1996年に開所した入所定員80人(従来型60人、ユニット型20人、平均要介護度3・8)、短期入所20人の複合型施設。「ひとつの命をともに生きる」を基本理念に掲げ、地域に根付いたサービスを提供している。

 

 看取りケアは、週5日診察に来る常勤医師が、利用者の死亡時にもすぐに来て死亡確認してくれたこともあり、開所当時から実施していた。「終末期と医師が判断したときに、医師と看護師が家族の希望を聞く。施設での看取りを希望する場合は介護職員に話し、看取り体制を整える多職種連携の対応が自然にできていた」と看護師の宇野美穂さんは振り返る。

 

 開所当時は施設での看取りを希望する家族は少なかったが、希望がある限りはそれに応えようと、看取りケアを続けてきた。その後、2006年の看取り加算創設に合わせ、ケア体制や書類などを再整備。現在は、看取る人数の増加に伴う常勤医師の負担増を考慮して、夜中(0時から午前6時まで)や、診察中の死亡確認を午前6時以降または診察終了後に変更した。しかし、基本は開所当時と全く変わっていない。

 

 そして長年の積み重ねもあり、椿野苑で看取りを希望する家族は徐々に増えていった。16年は25人が退所したが、そのうち20人を施設で看取った(看取り率80%)。

 

 また、12年からは短期入所の利用者の看取りも開始。自宅で十分なケアを受けられない人や、入院を拒まれた人などを受け入れて看取っている。「これまでに看取った短期入所の利用者は10人。16年度は5人を看取った。利用者の希望に応えることは、入所であっても短期入所であっても変わらない」と井上施設長は話す。

 

 短期入所の利用者まで含む看取りケアを可能にしているのは、職員の間に〝看取るのは当たり前〟という考えが浸透していること、多職種連携によるケア体制が整っていることのほか、多彩な機器を工夫して使っていることがある。

 

移乗もリフトを使い負担を軽減する

 

 日常的には、居室での移乗ケアに(株)モリトーの床走行式リフト、浴室での移乗ケアに明電興産(株)の天井走行式リフトを使用。個々の残存機能を損なわないよう移乗ボード、シートも使っている。また、車いすは、安全な移乗と安楽な座位保持ができるように調整機能付き車いすを多く用意している。

 

 ベッド上の姿勢ケアにも力を入れており、(株)モルテン、(株)タイカのポジショニングクッション、複数メーカーの機能が異なるエアマットレスなどを活用。褥瘡じょくそう予防や安楽な姿勢保持に努めている。

 

 こうした日常のケアに加え、看取り期には専用の機器を使い、入浴方法もより負担の少ない方法に変えるなど工夫している。

 

看取り期専用枕を使うなど寝姿勢に配慮する

 

 例えば、枕は低くて柔らかく、体位交換の際にも頭が落ちない(株)モルテンのポジショニングピロー「ピーチ」を使用。エアマットレスはADL(日常生活動作能力)や皮膚の状態などを見て最も適した種類のものを選ぶ。

 

 入浴方法は、少しでも移乗の負担を減らすために、多床室はベッドごと利用者を移動し、ユニット型は機械浴の寝台を居室に運んで、平行移乗した後に浴室に移動し、寝式機械浴で行う。身体を洗うのも浴槽内でするなど、負担の少ないケアを追求している。

 

 「看取り期に入る前に『自宅に戻りたい』『お墓参りをしたい』といった利用者の希望に応えてきた。今後もできるだけ多く応えていけるようにしたい」という椿野苑。そこには最善の看取りケアをしているという自信と、地域に根付いた施設として利用者の希望に応えたいという強い思いがあふれている。

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