「新ビジョン」一色の大会 児童養護施設への偏見だと批判

2017年1201 福祉新聞編集部
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基調報告する桑原会長

 第71回全国児童養護施設長研究協議会が11月8日から3日間、鳥取県内で開かれた。改正児童福祉法を受けた「新しい社会的養育ビジョン」への反発が強まる中、桑原教修・全国児童養護施設協議会長は改めて新ビジョンについて「厚生労働省による拙速な議論だ」と批判。全養協として積極的に提言することなど大会宣言も採択した。

 

 厚労省の検討会が8月にまとめた新ビジョンは、原則として里親委託を進めることなどが柱。具体的には施設の滞在期間を乳幼児で数カ月以内、学童期以降で1年以内とし、施設には機能転換を求めている。これに対し、全養協は2回にわたって厚労省に意見書を提出してきた。

 

 初日の基調報告で桑原会長は、児童養護関係者への確認なく新ビジョンがまとめられたと改めて批判。「検討会は、子どもの育ちという絶対的なキーワードで包み込み、数値目標や工程表の根拠を不鮮明にした。その根底には、施設への偏見がある」と述べ、施設の役割をもっと発信すべきと主張した。

 

 施設の機能転換についても「施設は養育のデパートではない」とし、質を担保した養育の運営があってこそ地域支援や里親支援ができるとした。

 

 行政説明では、成松英範・厚労省子ども家庭局家庭福祉課長が新ビジョンについて解説した。家庭養育原則は評価される一方で、数値目標などはさまざまな意見があるとの認識を示し「施設や里親、自治体などと一緒に取り組まなければならない」と語った。

 

 今後、厚労省が年内に策定する「都道府県推進計画」の見直し要領には、関係団体から拙速だとの意見も出ている。しかし成松課長は「都道府県にしわ寄せがいく」として、スケジュール通り進めることに理解を求めた。

 

 3日目には桑原会長、鈴木寛・全養協ブロック長会議長、村瀬嘉代子・日本心理研修センター理事長が登壇するシンポジウムもあった。

 

 桑原会長は「どうしても里親と比較する軸で施設は見られる。施設は万能ではないが、これまで多くの子どもを送り出し、活躍している」と強調。その上で「施設が養育文化の質をしっかりつくることが重要だ」と述べた。

 

 鈴木会議長は「社会的養護でもイノベーションが必要。時間や人を集中的に投入して、社会の評価に耐えうる施設の養育論を発信すべきだ」と主張。村瀬理事長は「家族イコール望ましい養育能力の場と考えるのは、家庭が変わる中、残念ながら適切とは言えないのでは」と語った。

 

 大会では、子どもたちのニーズに応じた変革となるよう積極的に提言することや、職員の労働環境の整備などを盛り込んだ大会宣言を採択。閉会にあたり、伊山喜二・全養協副会長は「全養協の統一見解として、新ビジョンは我々の仕事を否定しており特に数値目標には反対だ。一致団結して、この難局を乗り切りたい」と呼び掛け、それぞれの施設が地元で理解を広げるよう協力を求めた。      

 

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