札幌の共同住宅で11人焼死 困窮者支援の現場でまた悲劇

2018年0214 福祉新聞編集部
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警察と消防による懸命な現場検証が続く(2月2日)

 1月31日深夜に発生した火災で、入居者11人が死亡した札幌市東区の共同住宅「そしあるハイム」。合同会社「なんもさサポート」(藤本典良代表)が物件を借り上げ、身寄りのない高齢者や生活困窮者に有料で提供していた。一部の高齢者に食事の提供も行っていたことから、無届けの有料老人ホームとの疑いがかけられている。こうした法律上グレーな施設は全国に多数あるとみられ、またしても多数の生活保護受給者が犠牲となった。生活困窮者支援の狭間で何が起きているのかーー。現場に飛んだ。

 

 現場を取材した2月2日。火災発生から2日たったにもかかわらず、周辺には焼け跡の何とも言えないにおいが漂っていた。黒焦げの建物や焼け落ちた屋根は遠目からでも被害の大きさが分かるほど。建物の周りには大規模な規制線が張られており、規制線外の雪の上に被害者を悼んで花や果物がポツンと供えられていた。

 

 そしあるハイムは、古い旅館を再利用した木造2階建てで、築年数は50年に及ぶ。火災当時40~80代の16人が入居しており、このうち13人が生活保護受給者だった。家賃は住宅扶助の上限額の月3万6000円で光熱費が月1万円。希望者には月2万円で食事の提供も行っていた。

 

 建物は下宿やアパートと同じ扱いになるため、消火器や自動火災報知設備などの消火用設備はあったがスプリンクラーの設置義務はなく、直近の検査でも法令違反は見つかっていない。

 

 夜間に職員配置はなかった。各居室に暖房器具があったことから、最も燃え方の激しい1階部分に給油用の灯油ポリタンクが見つかるなど、高齢者が多く暮らす建物にしては可燃物の取り扱いがずさんな一面もあった。

 

 

 そしあるハイムのように、高齢者の入居サービスと食事提供サービスなどを行っていれば、老人福祉法上の有料老人ホームに規定されることになるが、届け出はされていなかった。有料老人ホームとして認可されるに当たっては、防火設備の場合、スプリンクラーの設置義務が発生する。

 

 札幌市は2016年1月、そしあるハイムが無届けで有料老人ホームを営業しているとの情報を第三者から受け、調査を開始。同事業者に対し4回にわたって実態把握のための「高齢者向け住宅調査票」を送付したものの、正式な回答はなかったという。調査票の回答は任意だが、事業者が市に協力しなかったことで、結果として適切な指導にはつながらなかったことになる。

 

 ハイムのある東区のケースワーカーが、そしあるハイムに生活保護受給者が暮らしていることを把握したのは今から約10年前。

 

 生活保護受給者への訪問で、施設の老朽化や火事に対する危険性だけでなく、有料老人ホームとしての運営実態を市よりも早く把握していた可能性があり、情報を共有することで、問題を早期に表面化できていたかもしれない。

 

 札幌市東区保健福祉部の牟田口美樹・保護一課長は「ケースワーカーが、そしあるハイムのような無届け施設に住居として生活困窮者を紹介することはない」と断言した上で「(入居者が生活する上で)大きなトラブルはなかったと聞いている。それだけに残念だ」と言葉を詰まらせた。

 

 現在、札幌市内にある養護老人ホームは全部で4カ所。定員は330人で入居率はほぼ100%となっている。

 

 札幌市内で生活困窮者の自立支援を行っているNPO法人によると「養護老人ホームや救護施設などでの集団生活や規律正しい生活になじめない人が、いつの時代も一定数いる。そういう人たちが自由を求め、最終的にそしあるハイムのような場所にたどり着くのでは」と分析する。

 

 なんもさサポートが市内で管理する物件は、そしあるハイム以外に40件あった。

 

 

 

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