高知県のモデル施設「特養 大野見荘」 意識が変わり腰痛ゼロ

2018年0227 福祉新聞編集部
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ボードとシートを組み合わせて平行移乗する

 高知県中土佐町の特別養護老人ホーム「大野見荘(豊島知章施設長)は、2016年度に県が進めるノーリフティングケアのモデル施設に指定された。利用者を人の手で抱え上げたり、引きずったりしないケアの大切さを学び、全体化することで同荘のケアは一変。移乗などのケア時に腰痛になる職員はいなくなり、褥瘡や拘縮などの2次障害防止につながるなど好効果をもたらしている。

 

 社会福祉法人大野見福祉会が運営する同荘(入所50人、短期入所10人、平均要介護度4・6)は、中土佐町の中でも人口減少が急速に進む大野見地区にある従来型施設。55人の職員の3分の2は町外からの通勤者で、人材定着・確保のための腰痛防止は深刻な課題だった。

 

 手動式昇降ベッドを使い、利用者を抱え上げたり、ベッド上を引きずって移動させたりしていたケアが大きく変わったのは14年度から。リフトや移乗ボードを導入し、16年度に県のモデル施設に応募し、使い方を一層進化させたことがきっかけだった。

 

 モデル施設になった同荘は、生活相談員の武田貴彦さんら4人のチームを8カ月に及ぶマネジメント研修に参加させた。そこで4人は、職員の腰痛や利用者の2次障害を防ぐために「持ち上げない、抱え上げない、引きずらない」ことの大切さと、施設全体で取り組む必要性を学んだ。

 

 また、研修で学んだことを全体化するためにノーリフト委員会を設置。施設全体でノーリフティングケアに取り組む体制を整えた。

 

 この間も現場では、マネジメント研修で学んだリフトやボードを使った移乗方法を実践し、必要な機器を整えていった。

 

 その結果、ノーリフティングケアは着実に浸透。機器も浴室に固定式リフト1台、居室用に床走行式リフト2台、排せつケア用にスタンディングリフト2台、移乗用のボードを全居室と浴室に配備。移乗や体位変換、圧抜きに役立つグローブは全職員が持つようになった。車いすもボードが使いやすい肘上げ式のものに変え、県の介護福祉機器等導入支援事業費補助金を活用して、すべてのベッドを昇降機能付き電動ベッドに改めた。

 

 特にロメディックジャパンのボード、(株)いうらのティルト・リクライニング(TR)型車いすは移乗ケアに、アイ・ソネックス(株)のスタンディングリフトは排せつケアに欠かせないものになっている。

 

 「必要なものには金をかけないといけない。ベッドの交換だけで1000万円かかったが、職員の腰痛予防に役立つなら安いと思った。手動式昇降ベッドは希望する地域の方々に無償で提供した。法人役員の理解があった」と豊島施設長は語る。

 

 

座位がとれる人はボードを使って移乗する

 

 現在は利用者50人中、ベッドと車いす間の移乗でリフトを使っているのは1人、27人がボードを使用している。平均要介護度の高さに比べリフト使用者が少ないのは、座位が取れない人でもボードとシートを併用し、TR型車いすに滑らせて移乗できるようになるなど、巧みな移乗技術を習得しているからだ。

 

 モデル施設になって約3年。リフトやボード・シートを使った抱え上げないケアをすること、シートやグローブを使った引きずらないケアをすること、中腰で記録業務をしないなど介護業務以外でも中腰姿勢を取らないよう気を付けることは、同荘にとって当たり前のことになった。

 

 「電動ベッドが入ったことで夜勤時の疲れが大幅に減った。16年度以降、ケアをしていて腰痛になった職員は1人もいない。腰痛対策は意識改革だ」と豊島施設長は話す。

 

 

スタンディングリフトで8人がおむつなしに

 

 ケアの質も向上した。排せつケアでスタンディングリフトを使う8人は、おむつの必要がなくなり、下剤も使わず済むようになった。移乗時に車いすなどに足をぶつけてできる表皮剥離も減少した。「機器の活用により、褥瘡や拘縮など2次障害を防ぎ、利用者の尊厳を守るケアができるようになった」と武田さんは話す。

 

 モデル施設になったことで、職員の労働環境やケアの質が大きく向上した同荘。ノーリフティングケアをスタンダード化する県の取り組みは、着実に成果を上げているようだ。

 

 

 

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