新調理システムで味が安定 食べやすくなり残食は減少

2018年0511 福祉新聞編集部
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加熱後にも一手間かけて魚にタレを塗る厨房職員

 京都市左京区の社会福祉法人友々苑(中西彦介理事長)の介護老人保健施設「友々苑」は2017年9月、調理業務の委託先変更に合わせ、新調理システムを導入した。味が安定し、咀嚼・嚥下しやすい形態での食事が可能になったことで残食は減少。安全・安心でおいしい食事が提供できるようになった。

 

 1998年に開所した友々苑は、京都市北部にある定員100人(うち認知症専門棟40人、平均要介護度3・2)の従来型施設。調理業務は、開所当時から給食調理会社に委託していた。「人が少ない地域特性から人材確保は難しいと考え、業務委託した」と山下俊行・副施設長は話す。

 

 食事は、利用者の口腔・嚥下機能に合わせ、(1)常食(2)一口大(3)刻み(4)極刻み(5)ペーストーーの形態で提供。調理方法は、調理後2時間以内に提供するクックサーブ方式で行っていたが、作り手によって味が変わったり、ペースト食の見た目が悪かったりするなど、利用者が満足する食事を提供できないこともあった。それは給食調理会社を替えても変わらなかった。
 

 

 言語聴覚士の北岡美紀さんからは「極刻みは固い食材を細かくしただけ。かみやすいが、誤嚥のリスクがある。歯茎でかめる軟菜食がほしい」という要望が出ていた。しかし、今までの委託会社と設備、限られた人材ではそこまでの対応は難しかった。

 

 「安定したおいしい食事を提供したい。誤嚥のリスクも軽減したい」。そう考えていた時、日清医療食品(株)から同社のセントラルキッチン(CK)でクックチル方式により、調理・冷却した食材をスチームコンベクションオーブン(スチコン)で再加熱して提供する「モバイルプラス」の導入が提案された。また、ポスト刻み食として開発した「モバイルプラスやわら御膳」の活用も勧められた。

 

常食と変わらない見た目ながら柔らかさを実現した「やわら御膳」

 

 やわら御膳は常食とほぼ変わらない見た目ながら、弱い力や歯茎でかめる柔らかさを実現した食事。普通のとんかつの硬さを100としたとき、わずか12の柔らかさで、ブロッコリーなど色が飛びやすい食材も調理法を工夫して、食材本来の色のまま提供できる。

 

 調理方法も、冷菜は開封して材料をあえるだけ、温菜はスチコンで加熱後に開封し盛りつけるだけ。厨房職員の作業負担を大幅に軽減できる。

 

 同社の提案を受けた友々苑は、試食を重ね、味や見た目の良さなどから、17年9月に同社に調理業務を委託。ご飯とみそ汁(具材はCKでカットしたものを使用)はこれまで通りクックサーブで、主菜と副菜をクックチルで提供することにした。

 

主菜と副菜はクックチル方式で調理する

 

 変更直後は、一口大、刻み、極刻みから、やわら御膳になった利用者から「そのままの形で出ているけど大丈夫なのか」といった戸惑いの声が出た。友々苑はそうした声を同社に伝え、CKと現場での対応に工夫を重ね、利用者が満足する食事に変えていった。

 

 現在の食事形態は、(1)常食(35~45人)(2)やわら御膳(35~45人)(3)ムース(10人)(4)ペースト(2人)--に変化。照り焼き料理などは、盛りつけた後でもタレを塗ったり、茶わん蒸しに刻んだユズを入れたり、一手間かけた季節感あふれる食事を提供できるようになった。

 

 「やわら御膳を提供したことで誤嚥のリスクが減り、咀嚼・嚥下機能が向上している。老健施設の役割である機能維持・改善に役立っている」と話す北岡さん。残食が減り、個々の利用者に合った形態で食事を提供できるようになったと喜ぶ。
 一方、モバイルプラスに変えたことは、経営面にもプラスがあったという。食中毒のリスクも減り、厨房職員の朝の出勤時刻も30分遅くなった。

 

 「クックサーブで大量調理できる技量のある職員を探すのは大変だが、その心配もなくなった。食材費は高くなったが、水光熱費は安くなり、食材の下ごしらえの手間がなくなった分、人件費も1・5人~2人分少なくなった。1年たたないとはっきり比較できないが、トータルすれば食事にかかる委託費用は変わらない」と山下副施設長は話す。

 

 安全・安心でおいしい食事の提供を追求し続け、新調理システムとやわら御膳を導入した友々苑。そこには食の都・京都の施設ならではの食に対するこだわりがあった。

 

 

 

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