マラケシュ条約を承認 視覚障害者らの書籍利用しやすく

2018年0515 福祉新聞編集部
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音訳の様子(日本点字図書館)

 視覚障害者らが著作物を利用することを促すマラケシュ条約が4月25日、参議院本会議で承認された。条約は、著作物を点字図書や録音図書に複製し、利用しやすくするよう各国に求めている。2013年に世界知的所有権機関が採択してから5年を経て、日本も締結することになる。障害者の著作物利用に関する国際的な枠組みづくりが進展すると期待されている。ニーズが顕在化すれば、出版の段階から録音図書の製作が進む可能性もある。

 

 

 条約は受益者を「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者」とし、識字障害者、書物を持つことの難しい肢体不自由者を含めた。その上で、締約国が受益者のために著作権(複製権、譲渡権、利用可能化権)の権利制限規定を設けること、受益者が利用しやすい形式の複製物の輸出入が円滑に行われるよう制度を整備することを規定している。

 

 日本では既に視覚障害者らが著作者の許諾を得ずに複製できるようになっているが、肢体不自由者は含まれていない。このため、今国会で受益者の範囲を広げる著作権法改正案が審議されている。

 

 複製物の輸出入に関しては、各国の「権限を与えられた機関」(点字図書館などを想定)が窓口になる。日本では既に政令で定められているため、同条約の締結を受けて窓口を新たに指定する必要はない。

 

 これまで著作物に接する機会の少なかった視覚障害者らの利用が広がれば、出版社が商機を求めて録音図書を作ることも広がる可能性がある。

 

 日本では15年、複数の大手出版社が「日本オーディオブック協議会」を設立。録音図書の市場拡大を視野に入れている。

 

 世界知的所有権機関が提案した同条約は13年6月27日、モロッコのマラケシュで採択され、16年9月30日に効力が発生。締約国は今年2月1日時点で33カ国に上る。

 

田中徹二・日本点字図書館理事長の談話

田中徹二・日本点字図書館理事長

 

 日本の著作権法は視覚障害者などに著作物の複製を認める点で他国よりも古い歴史がある。それにより今ではデイジーで編集した音声やテキストの図書がたくさんできている。当法人がシステム管理する電子図書館「サピエ」は2010年4月から稼働しており、会員登録した障害者はどこにいてもデイジー図書をダウンロードすることができる。この条約は各国がわが国のような著作権法に早く合わせ、国境を超えてつながることを促すものだ。世界の視覚障害者がより多くの本に接するようになってほしいと思う。当法人もなんらかの貢献ができるように努めていきたい。

 

 

《ことば》

 

 ◇サピエ図書館=視覚障害者をはじめ、目で文字を読むことが困難な人に点字、音声データなどで情報提供するネットワーク。日本点字図書館がシステムを管理し、全国視覚障害者情報提供施設協会が運営する。タイトル数は約107万点、個人会員は約1万6000人(いずれも2017年度末)。

 

 ◇デイジー=視覚障害者などのためのデジタル録音図書の国際規格。音声デイジーは、音訳した音声データをデイジー方式で編集した録音図書。専用ソフトがあれば、パソコンやアイフォーンなどにダウンロードして聴ける。音声、文字、画像が同期するマルチメディアデイジーは、弱視者だけでなく、発達障害者も利用している。

 

 

 

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