〈児相改革〉3 現場は命がかかっている 家常惠氏

2018年0801 福祉新聞編集部
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家常惠・元大阪子どもネットワーク代表

 今年3月、東京都目黒区で5歳の女児が両親に虐待され亡くなった。事件を受け、国は緊急総合対策として、児童相談所の体制強化などを進める方針を掲げている。昨年8月に厚生働省が示した「新しい社会的養育ビジョン」以降、児童福祉は新たな転換期を迎えているようにもみえる。識者や現場の意見を聞いた。(3回の連載です)

 

  

 1960年に大阪府初の福祉専門職として入庁しました。それから35年にわたって人生を福祉にささげ、最後は大阪府中央児童相談所長も務めました。

 

 忘れられないのは95年、オウム真理教の麻原彰晃が逮捕された時のことです。山梨県上九一色村にいた5人の子どもを一時保護することになりました。

 

 すると、親と信者が30人ほど押しかけてきたのです。最初は部下が対応していましたが、らちがあかず所長の私が出て行きました。事件についていろいろと報道で知っていたので、私は面会するなり「あなたたちのトップは殺人者ですよ」と言ったら、それはもう向こうがヒートアップしてしまいましてね。部下には「所長、殺されますよ」と心配されました。結局、子どもたちは情緒障害児短期治療施設に措置しました。

 

 児相の現場はそのくらいの覚悟がいるということです。怖い人とも対峙しないといけないし、関係機関と複雑な調整をするときもあります。それなのに、現場の経験がほとんどなくても児相所長になれるんです。国も本気で児相を立て直すならば、素人でもトップに立てる状況を改善すべきでしょう。

 

 現場の児童福祉司だって同じです。大学で福祉などを学んだ人の専門職採用をぜひ進め、意欲のある人を増やしてほしい。最低でもケースワークやカウンセリング技術を学んで就職してほしいです。私もさまざまな自治体に研修会の講師として行きましたが、昇進のめがない定年前の人や、やる気のない若手ばかりを児相に集めていた自治体もありました。児相の現場は人の命がかかっているのに、がっかりしました。

 

 児相と警察との連携については、私は慎重な立場です。

 

 児相は児童福祉法に基づき支援する組織で、警察とは行動原理が全く異なります。警察は権力で当事者を抑え込むというスタンス。果たして、児相が警察と対等に議論し、当事者に寄り添う福祉的な支援ができるか。

 

 児相職員時代に、警察の要請で非行少年を支援しました。警察と関わることも多かったのですが、私が被疑者の関係者と間違えられ、刑事に怒鳴られたことがあります。また、子どもを一時保護している場所をバラされ、トラブルになるなど警察のひどい面も見てきました。

 

 もちろん良い警察官もいるんですが、組織として見たとき、何でも信用してはいけないと学びました。児相がいくら慎重に支援していても、警察が児相に断りなく勝手に動くことも起こり得るでしょう。

 

 児相は専門性が高く、公的機関が行う責任の重い仕事です。民間とは異なり、行政だからこそできること、やるべきこともある。日々悩んでいる全国の児相職員には「対象者の身に寄り添って頑張ってほしい」とエールを送りたいですね。

 

 

【いえつねめぐむ】元 大阪子どもネットワーク代表
 1937年生まれ。京都大卒業後、大阪府に入庁。府中央児相所長を経て、徳山大教授や大阪児童福祉事業協会理事長を歴任。2003年には府内の関係者による分野横断型の「大阪子どもネットワーク」を設立。全国の先駆けとなったことなどから、16年に毎日社会福祉顕彰を受賞した。

 

 

 

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