獣害対策が障害者の仕事に イノシシ皮製品の製造も (広島・岡山)

2018年1207 福祉新聞編集部
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防護柵の設置訓練をする共働福祉会

 地域課題の解決と障害者の工賃増をどちらも目指そうと、獣害対策に取り組む社会福祉法人が出てきている。広島県福山市の共働福祉会(戸田榮次理事長)は、10月からイノシシ被害対策プロジェクトを開始した。岡山市の金曜会(安井直人理事長)は、イノシシ皮を使った商品を製造・販売している。

 

 広島の共働福祉会が獣害対策に取り組むきっかけは、2016年、障害者多機能事業所「久松共働センター」の敷地内にイノシシが出没し、給食用の野菜を食い荒らしたり、夜の駐車場で職員が身の危険を感じたりしたことだった。

 

 行政に相談しても対策は取ってくれず、猟友会がないため捕獲も頼めない。自分たちで何とかするしかないと考え、ホームセンターで買ってきた防護柵を50メートルにわたり設置した。

 

 被害を食い止めた同会は、県内で農作物の獣害が4億円もあり、その7割がイノシシ被害であること、福山市で獣害が10年前の200倍に増えていること、家庭菜園を諦める高齢者が多いことなどを知り、地域貢献で獣害対策に取り組むことを決意。就労継続支援B型事業で柵の設置、助成金申請の代行、各種情報提供などを行うプロジェクトを立ち上げた。

 

 立ち上げに際しては、獣害対策で有名な國くに頭とう敬市・割石地区鳥獣被害対策協議会代表にアドバイザーを依頼。柵の設置方法などを学び、現場の監修役を務めてもらった。

 

 柵の設置は、(1)設置エリアの草を刈る(2)柵が20センチ程度埋まる溝を掘り柵を埋める(3)柵に支柱を取り付け番線で固定するーーといった手順。柵の種類はワイヤーメッシュ柵、電気柵などあるが、障害者が扱いやすい幅2メートル×高さ1・2メートルのメッシュ柵を主に使用。設置場所は畑や田んぼに限定し、危険が伴う山の作業はしない。

 

 設置にかかる費用は柵1枚分が1000円(人件費込み)。市の助成金を使うことで100メートルの柵を5万円程度で設置できる。現在は、プロジェクトのPRと訓練に重点を置いており、職員と利用者3人がこれに当たっている。

 

 アドバイザーの國頭氏は「知的障害があっても柵の設置は十分できる」と太鼓判。戸田理事長は「目指すは福山市内の獣害ゼロ。地域貢献を第一に考えた取り組みで、活動を通じて地域との協力、信頼関係を築いていきたい」と話している。

 

    ◇

 

 岡山の金曜会は2013年から、イノシシの皮を使った名刺入れやペンケース、巾着などの製造を始めた。

 

 きっかけは、岡山県が獣害対策と障害者の工賃増という課題解決を目指すモデル事業で、イノシシ皮製品の開発・製造を行う「KIBINO」プロジェクトを立ち上げ、県セルプセンターから縫製作業に実績のある同会に打診があったことだ。

 

皮製品を作る金曜会

 

 同会は旭川荘、吉備の里の2法人と一緒にプロジェクトに参加。現在は生活介護事業所「わくわく祇園,S」で、年間10頭分のイノシシ皮製品を作っている。

 

 染色されたなめし革を仕入れ、レーザー彫刻機で切断、針穴を開け、利用者が縫い上げる。今はまだ工賃増にまで結びついていないが、今後に期待しているという。

 

 このほか全国には、駆除された鹿肉を使って、佃煮やペットフードを製造・販売している法人もある。獣害は各地で増えており、山間部にある法人にとっては、他人ごとではない。地域課題の解決と工賃増を目指す社会福祉法人の獣害対策は、始まったばかりだが、大きな可能性を秘めているようだ。

 

 

 

 

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