母子生活支援施設の存続に危機感 大会で理解不足訴える声相次ぐ

2018年1210 福祉新聞編集部
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危機感を示す菅田会長

 第62回全国母子生活支援施設研究大会が11月21・22両日に鳥取県内で開かれ、255人が参加した。全国母子生活支援施設協議会(全母協)の主催。現在、全国の自治体ごとに社会的養育についての計画策定が進む中、菅田賢治会長は「母子施設を計画に入れなければ施設が消えてしまう」と述べ、危機感をあらわにした。

 

 母子施設は、18歳未満の子どもと母親が一緒に入所できる施設。全国に約230カ所あり、3300世帯が利用している。入所理由は夫などからの暴力が半数を占め、母親の3割に障害があるのが現状だ。

 

 現在、厚生労働省は自治体に対し、社会的養育に関する計画を2019年度末までに策定するよう要請。策定要領は、母子施設を「家庭養育の支援を実践してきた施設」と位置付け、改めて周知を求めている。

 

 基調報告で菅田会長は、「母子施設を計画に入れるよう運動しなければ消えてしまう」と述べ、自治体との連携強化が必要との認識を示した。利用者の状況より、市町村の財政事情が優先される傾向がある点も課題に挙げた。 

 

 続くシンポジウムでは、山崎美貴子・神奈川県立保健福祉大顧問をコーディネーターに、芹澤出・全母協副会長と稲垣美加子・淑徳大教授が登壇した。

 

 芹澤氏は、16年度の児童相談所への虐待相談12万3000件のうち、施設や里親のもとへ行くのは4%だと指摘。「残りは在宅支援や見守り。ここにどう切り込めるかが母子施設の生き残りの道だ」と述べた。

 

 一方で、昨年厚労省が出した新しい社会的養育ビジョンには、親子入所機能の創設が盛り込まれていることから、今後は他業種からの参入が増える見通しを示した。その上で、母子施設は地域のひとり親支援の拠点を目指し、産前産後の支援や、退所後の支援を行うべきだと訴えた。

 

 また稲垣氏は、母子施設の役割について「ニーズの掘り起こしだけでなく、社会へのアピールも大事。社会資源をつくり出すことも求められる」と強調した。アウトリーチの必要性にも触れ「ひとり親支援のストックを生かした家族支援を展開してほしい」と期待した。

 

 これらを受け、山崎氏は、「母子施設は地域の中で家族支援の拠点であるとの存在感を示すことが大事。計画の中にしっかり位置付けるよう文章で提案する働き掛けが必要だ」と語った。

 

潜在化するリスク

自治体との連携について話す海田さん(左)

 

 2日目の分科会では、大阪府内の母子施設職員7人で構成する「大阪魁プロジェクトチーム」(PT)で委員長を務める海田泰隆さんと副委員長の桒田将格さんが自治体との連携について発表した。

 

 2017年に立ち上げたPTは、困窮や虐待など母子世帯への支援ニーズはある一方、定員に満たない現状を疑問視。施設の在り方とニーズにミスマッチがあると考え、大阪府内に71カ所ある福祉事務所をすべて訪問し、情報提供と意見収集をした。

 

 すると「DV以外の理由でも入所できるか」「中高生男子がいても入所できるか」「どの程度の障害まで入所できるか」などの質問が寄せられたという。また退所要件やアフターケアについても聞かれた。

 

 海田さんは、ある区では年間のDV相談50件のうち、施設入所となるのが5%だったという実績を紹介。「入所に至らない人のリスクは高く、潜在化する可能性がある」と話した。

 

 そのため「施設機能をPRすることで、利用のハードルを下げることが必要」と指摘。「緊急的な保護の意味合いから、生活再建や親子関係再構築をやる意味を伝える必要がある」と語った。今後は福祉事務所との共同研修の企画も行いたい考えを示した。

 

 

 

 

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