「劣悪宿泊所の悲劇なくせ」 全社協が住まい・生活支援を提言

2019年0121 福祉新聞編集部
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18年1月には札幌市の共同住宅火災で生保受給者ら11人が亡くなった

 本当に困っている人に支援は届いているのか――。こうした問題意識から、全国社会福祉協議会は、地域のセーフティーネットの強化を求める報告書をまとめた。貧困ビジネスと呼ばれる宿泊施設への入所を余儀なくされる人が増え、火災による犠牲者も出る中、社会福祉法人が低所得高齢者らに対して、住まいと生活支援を一体的に提供する仕組みを提案。行政の公的責任もきちんと果たすよう求めている。平成という時代が終わろうとしている今、「本当に利用者主体の福祉制度が確立したのか」を問う異色とも言える内容となっている。

 

 全社協政策委員会に設置されたセーフティネット対策等に関する検討会は、昨年4月から6回にわたり議論。宮本太郎・中央大教授を座長に、救護施設や養護老人ホーム、母子生活支援施設、無料低額宿泊所の経営者ら12人が委員を務めた。

 

 検討会の出発点は、基礎構造改革が掲げた「選択と契約」という理念が実現しておらず、本当に困っている人に支援が届いていないのではないか、という認識だ。

 

 昨年、札幌市の共同住宅「そしあるハイム」で発生した火災では、入居していた生活保護受給者など11人が死亡。住宅にはスプリンクラーがなかった。同様の火災事件は、2009年に群馬県渋川市の無届け施設「たまゆら」以降も相次いでおり、今年1月4日に横浜市の簡易宿泊所でも起きている。

 

 

 報告書は、特に生活の基盤となる住まいの問題に着目。高齢の生活保護受給者を設備の不十分な宿泊所へあっせんするなど、福祉事務所のケースワークが十分に機能していない現実を指摘した。この30年で養護老人ホームや救護施設の数も横ばいで、財政上の問題から行政が施設に入所させない「措置控え」も問題視している。

 

 これを踏まえ現実的な支援策として、社会福祉法人などが全国800万戸を超える空き家を活用した住まいの提供に加え、見守りなどの生活支援を一体的に提供する「地域居住支援」の仕組みを提案。居宅生活と施設入所の中間的な位置付けで、増え続ける空き家対策にも役立つとする。

 

 ただ、そうした取り組みを進めるには社会福祉法人などの自己財源にも限界がある。そのため、公的責任として建物の購入費や賃料、火災通報装置など設備改修の費用を補助制度として創設するよう求めた。

 

 さらに報告書は、福祉事務所と社会福祉法人の連携強化にも言及した。具体的には、救護施設などの職員の専門性を生かし、生活保護受給者へのアセスメントや支援計画の立案、自立支援プログラムの一部委託などによる福祉事務所の機能補完を挙げている。

 

 池上実・全社協政策企画部長は「公の責任と民の創意工夫に基づく取り組みを組み合わせ、誰もが安心して生活できる地域を目指す報告書。厚労省や自治体にも提出しており、現場の社会福祉法人も含めて活用してほしい」としている。

 

 

 

 

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