保育士が幼稚園へ出向き預かり保育 社福法人への委託で実現(千葉・松戸市)

2019年0123 福祉新聞編集部
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まるやま幼稚園に保育士が出向き預かり保育をする

 千葉県松戸市は、小規模保育事業の〝3歳の壁〟問題と、幼稚園の定員割れ問題をどちらも解決する「社会福祉法人委託型預かり保育事業」を2018度からモデル事業で始めた。幼稚園の預かり保育を、保育所から出向いた保育士が担う全国初の取り組みだ。行政、幼稚園、保育所に〝三方よし〟の効果を生んでおり、松戸市は19年度に指定個所を増やし、待機児童対策の柱に据える。

 

 16年度から3年連続で待機児童ゼロを実現し、日経DUAL調査の「17年度共働き子育てしやすい街」ランキングのグランプリに選ばれた松戸市。0~2歳児は小規模保育事業を増やし、3~5歳児は幼稚園の利用を促すことで待機児童対策を進めている。保育所の新設は多額の予算も必要で、幼稚園の定員割れを助長する。開設経費が少ない小規模保育事業と、定員充足率が68%の幼稚園を最大限活用する考えだ。

 

 働く親が幼稚園を選択できれば、小規模保育事業の利用児が3歳になったときに連携保育所の空きがなく入所できない〝3歳の壁〟問題も解決できる。松戸市は保育所に比べて預かり時間が短く、利用料も高い幼稚園の利用促進策を講じた。

 

 預かり時間(午前9時半~午後2時)は、市内38園の大半が県の補助金により午後5時まで延長していたが、松戸市は午前7時半~9時半と、午後5時~6時半の人件費を補助する独自制度を創設。利用料は保育料助成制度を設け、保育所と同じ程度の自己負担額で利用できるようにした。

 

 しかし、市の制度を活用したのは13園。職員確保が難しい中、昼寝を伴う保育や夏休み期間中の1日保育の経験が少ない幼稚園にとって、長時間保育のハードルは高かった。そこで考えたのが、社会福祉法人委託型預かり保育事業だった。

 

 委託型事業は、幼稚園開園日の午前7時半~9時半と午後2時~午後6時半の預かり保育と、土日を除く幼稚園閉園日の1日保育を保育所の保育士が担うもの。幼稚園は県と市の補助金と利用料から、保育所に委託料を払う。

 

 使用可能な場所や鍵の管理方法、昼食の提供方法、保護者からの連絡事項の引き継ぎ方法など細かな取り決めは、市幼児保育課が間に入って調整する。「幼稚園と保育所は文化などいろいろ違う。互いの良さを伝え、合意点を見出すのが大切」と鈴木伸一課長は話す。

 

全国初、〝三方よし〟

 

 モデル指定されたのは、学校法人まるやま学園の「まるやま幼稚園」と社会福祉法人さわらび福祉会による幼保連携型認定こども園「野菊野こども園」。

 

 共に45年以上の実績があり、さわらび福祉会が運営する松戸駅送迎保育ステーションで預かった3歳以上児を東部地域の保育所に送迎するバスのルート上にまるやま幼稚園があることから選ばれた。

 

 預かり保育は、保育士5人がローテーションを組み、常時2人体制で行う。朝は幼稚園に直接行き、朝の保育終了後、送迎用バスで保育ステーションに戻るなど勤務体制を工夫。元幼稚園勤務の保育士を選ぶ配慮もした。

 

 モデル事業を始めて8カ月。1日平均7~8人だった預かり保育の利用児は2~3倍に増えた。まるやま学園創始者の高橋直人・前理事長は「お遊戯会翌日の月曜日に幼稚園は代休したが、預かり保育はしたので保護者から感謝された。これからは入園者増も期待できる」と話す。来年度は預かり保育と2歳児のプレ保育用の新館を開設するという。

 

 一方、さわらび福祉会の和田泰彦理事長は「ひとり親家庭やフルタイム共働き世帯の子どもを連携保育所に優先するなか、保護者が望む幼稚園が選択肢に入ってうれしい。社福法人としての使命を果たしたい」と話す。幼稚園を知ることで保育所の認定こども園化に弾みがつくという。

 

 来年度は新たに5カ所を指定し、委託型事業を広げるという松戸市。行政、幼稚園、保育所が連携した三方よしの取り組みは「地域の子育てを守りたい」という共通の思いに支えられている。

 

 

 

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