児童虐待防止の新資格で激論 社会福祉士会は子ども家庭福祉士に反対

2019年0304 福祉新聞編集部
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議員の会で反対を表明する西島会長(中央)

 子ども分野の新資格をめぐる動きが活発化している。超党派の国会議員で構成する「児童虐待から子どもを守る議員の会」(塩崎恭久座長)は2月20日、子ども分野の新しい国家資格について議論。講師に招かれた西島善久・日本社会福祉士会長は、児童相談所への社会福祉士の必置化を求めた上で、「新資格には反対」の意思を表明した。しかし参加者からは「やはり新資格が必要」との声が相次いだ。一方で、別の研究者グループは、厚生労働省で記者会見し、新資格反対の署名活動を開始したことを明らかにした。

 

 子ども分野の新資格については、厚労省のワーキンググループでも意見が割れ、今後、専門委員会で検討することになっている。

 

 しかし、千葉県野田市の小4女児虐待死事件を受け、議員の会は2月12日、児童福祉司の専門性強化などを求める決議を採択。今国会に提出予定の改正児童福祉法の付則に「子ども家庭福祉士」(仮称)の創設を盛り込むよう要望している。

 

 議員の会で西島会長は、決議の中身に対しては同じ姿勢だと強調。しかし新資格の創設には反対の意思を表明、理由については「現行の社会福祉士と精神保健福祉士を活用することで対応できる」と説明した。

 

 具体的には、児童相談所に社会福祉士などの必置化を提案。行政機関には異動もあるため、社会福祉士のように分野を横断できる方が望ましいとした。

 

 また、2011年から始まった上乗せ資格である認定社会福祉士制度には、児童・家庭分野もあるため、既存の仕組みを活用した方が効果的で即効性があると主張した。

 

 この日の会合には「子ども家庭福祉士」創設を推進する西澤哲・山梨県立大教授も出席した。西島会長の主張について、西澤教授は「何の提案にもなっていない」と指摘。「児童福祉司に占める社会福祉士の割合は、この10年で急速に増えているが、児相の機能は改善されていないのではないか」と述べた。社会福祉士の養成課程で1科目しか子ども虐待を学ぶ科目がない点も問題視した。

 

 また、今の社会福祉士の養成では、臨床が弱く、制度運用しかできないと批判。児相で働く認定社会福祉士がほとんどいないことから、「仮に認定制度が現場にプラスならもっと多くの人が受講するはず」と主張した。

 

 これに対して、西島会長は「虐待の背景には貧困や障害などの問題もあり、全体的に家族を支える視点も大切だ。資格を取ればすぐに実践できるわけはない」と反論。それに対し西澤教授は「スタート時点のクオリティーを上げればもっと効率的だ」と返した。

 

 こうした議論に議員からは「児相に社会福祉士を必置化し、その間に新資格で養成してはどうか」などと、新資格に賛成の声が挙がった。塩崎座長も、既存の仕組みでは専門性が高まらないとの見解を示し、「社会福祉士や精神保健福祉士、子ども家庭福祉士が強みを生かし、一緒にチームで子どもを守るのがこれからの流れではないか」と理解を求めた。

 

研究者ら反対署名も

 

 社会福祉分野の研究者でつくる有志の会は2月22日、厚生労働省内で記者会見し、子ども分野の新資格創設に反対する声明文を発表した。代表の木下大生・武蔵野大准教授は2月7日から反対の署名活動を開始し、2週間で2500筆に上ったことを明らかにした。署名などは近日中に国へ提出するという。

 

 声明は、子ども虐待の背景には親の経済的貧困など複合的な問題があると指摘。解決するには社会福祉全般の知識や技術こそが必要だとして、既存の福祉資格の養成カリキュラムなどの充実を求めた。

 

 その上で、国や職能団体が協力し、専門的な研修体制を整えるよう要望した。児童相談所には人事異動で他分野に移ることもあり専門性が育たないという指摘もあることから、既存の福祉資格を持つ専門職を必置義務とすることも求めた。

 

会見する木下代表(中央)

 

 会見には木下准教授のほか、日本精神保健福祉士協会の木太直人・常務理事ら5人が出席した。

 

 木太常務は「新資格を創設しても即応性がないのが一番の問題点だ」と主張し、資格取得後の専門性向上こそが重要だと強調した。

 

 木下准教授は、福祉の国家資格の歴史も説明し、「ソーシャルワーカーの国家資格を複数創設することは政策的にもちぐはぐ。このままでは障害や貧困、外国人などあらゆる分野で資格が必要になる」と疑問を呈した。

 

 

 

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