障害児と向き合う 保護者にも寄り添う(国分保育園・大阪)

2019年0508 福祉新聞編集部
    • このエントリーをはてなブックマークに追加

 1歳から国分保育園に入園したたかし君(仮名)。先生からの呼び掛けに対する反応が鈍かったり、会話のときに目線をそらしたりするような子だった。

 

 「他の子と何か違うかも」。当時担任だった阿形弘美さんが違和感を感じ取ったのは、たかし君が2歳児クラスに上がってから。

 

 食事の際にほぼ毎日、嘔吐を繰り返すようになったのに加え、歯磨きの練習で口内に歯ブラシを入れられることを極端に嫌がった。感情表現も乏しかった。

 

 児童本人への配慮はもちろん、阿形さんは「お母さんへの対応に最大限の配慮を心掛けました」と当時を振り返る。保護者に対して症状を直接的には報告せず、「今日こんなことがあった、こんなことができるようになった」とポジティブなイメージを抱けるよう言葉を選んでコミュニケーションを取るようにした。信頼関係の構築を最優先にすることで、保護者の側から相談しやすい環境をつくったのだ。

 

 するとある日、保護者から「言葉がうまく出ていないような気がする」と阿形さんに相談があった。以前から話していた嘔吐のことも含め、病院での検診を提案することに。検診の結果は「自閉症スペクトラム障害」。診断を受けてからは、保育園に通いながら、市の療育施設にも週に1回程度通うようになった。

 

 障害があると分かってから、本人にとって心地良い居場所づくりを心掛けるようにした。工作の時間、気が乗らないようなら、納得できるようその都度考える。知らない場所や急な移動を極端にこわがるため、早めに予定を教えてあげた。食事のときにぐずったら、静かな場所で落ち着くまで優しく見守った。

 

 クラスのほかの子どもたちの反応はどうだったのか。「みんな同じ作業をしている中、1人で遊んでいることに疑問を抱く子もいましたが、丁寧に説明したら理解して、子ども同士のつながりが深まりました」。

 

 3歳児クラスに上がってからは周囲に変化が表れ始める。教室のセッティングで、いすや机を出す作業をみんなでする中、たかし君が困っていると、ほかの園児が声を掛け、作業を手伝うようになったのだ。阿形さんは「特性を理解したことで、他人を気遣う心が芽生え、成長につながったのではないでしょうか」と目を細める。

 

 本人にも変化が表れ始めた。4歳になり、楽しかった休日の出来事を絵に描く時間でのこと。描画を一度もしたことがなかったのに、よほどうれしかったのか、お父さんと行った熱帯魚店での様子を一生懸命に描いたのだ。「障害のあるなしにかかわらず、感動・感激が大きな変化・成長をもたらすのだと改めて思いました」。このころから表情にも明るさが出始めたという。

 

アンパンマンは子どもたちの人気者

 

 そんなたかし君は無事に卒園し、今では特別支援学級のある小学校に元気に通っている。「今でも園にひょっこり顔を出してくれることもあるんですよ」と、阿形さんはうれしそうに話してくれた。

 

 「親御さんが子どもの育ち、成長に正しく向き合うことが大事です」と話すのは伊藤裕子園長。

 

 保護者の中には、我が子かわいさから子どもが発するわずかな違和感に気付かず、適切な子育てにつながらないこともあるという。また、保護者との信頼関係を築く前に、保育士からそれを指摘されると、ますます殻に閉じこもり、トラブルに発展するケースも。

 

 「保育士がいくら願っても、子どもの成長のカギを握るのは保護者の対応です。保護者がしっかりと子どもに向き合えるよう、我々保育関係者が寄り添う姿勢がいつの時代も必要なのです」と話した。 

 

 

 

 

気になる子が活きるクラスづくり: 発達特性を踏まえた保育のコツ
福岡 寿
中央法規出版
売り上げランキング: 37,397

 

保育士てぃ先生のつぶやき日誌 きょう、ほいくえんでね…!!
てぃ先生
マガジンハウス
売り上げランキング: 8,448
    • このエントリーをはてなブックマークに追加