人工内耳手術1万件突破 学会が難聴対策議連に初公表

2019年0610 福祉新聞編集部
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息子の人工内耳手術の経験を話す女性(右端)

 両耳が重度の難聴の人に、聞こえを取り戻すために行われる人工内耳手術。その日本国内での手術件数が、2017年までに1万件を超えたことが分かった。高橋晴雄・日本耳鼻咽喉科学会副理事長が5月28日、自民党の「難聴対策推進議員連盟」(石原伸晃会長)で明らかにした。 

 

 出席者からは「初めて見た。これまでメーカーに尋ねても非公開だった」(新谷友良・全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長)との声が上がった。高橋さんは学会が集計を終えたばかりであり、今後、広く公表するとした。

 

 議連に示された資料によると、1985年の手術開始時から2017年までの件数の合計は1万778件。両耳の手術は2件とカウントする。19年中には1万2000件を超える見込みという。

 

 2000年以降は年間100件を突破して増え続け、17年は600件を超えた。しかし、海外と比べると少ない。重度難聴者の人工内耳の比率は18歳未満が30%、成人が2%で、欧米諸国の3分の1程度だ。

 

 日本国内でも地域差があり、人口100万人当たりの手術件数は全国平均7・9件で、最も多い中国地方は10・3件。最も少ない北海道は5・0件だ。

 

 4歳までに手術を受けた事例を年齢別でみると、最も効果が高いとされる「0歳」は2・3%。「0歳」が2~3割を占めるオランダやドイツと比べて少ない。高橋さんは「日本で小児に手術を始めたのは06年から。まだ歴史が浅い」と話した。

 

 それもあって、日本では手術件数や手術時の年齢など、実態が把握しきれていなかった。難聴だと判明した新生児の親が、療育の情報を短期間で集め、療育方針を決断するのは容易ではない。

 

 また、人工内耳手術をしても完全に聞こえるようにはならない半面、手術後も環境の変化に合わせた息の長い支援が必要となる。そうした支援体制づくりが課題になる。

 

 議連はこうした課題に対し、先進的なサポート体制をつくり上げた自治体の例から学ぶため、長野県、静岡県の関係者を招いて説明を受けた。

 

 続いて、長野県内の病院で生後1歳半のときに人工内耳手術を受けた男子中学生(13)が、「季節の音を感じてみんなと共感できることがうれしい。多くの人に人工内耳を知ってほしい」と語った。

 

 同席した母親は12年前を振り返り「人工内耳に対しては、『親のエゴだ』といった批判が多かった。私は自分が音声言語で育ったように子どもも育てたいとの思いが強かった」と話した。

 

 一方、人工内耳手術のしやすい環境を整えることだけでなく、手話という言語(障害者権利条約に規定)の獲得を望む声も根強い。

 

 6月4日の同議連総会では、全日本ろうあ連盟が意見を表明。久松三二・常任理事・事務局長は音声言語を獲得する上で人工内耳には効果があると認めつつ、「手話を否定する医師がいるのが悲しい」と話した。

 

 また、「音声言語か手話言語かという議論はもう止めにしたい。どちらも与え、本人が成長してからどのようなコミュニケーション方法を望むか選択させるべきだ」と強調した。

 

 同議連は、特に新生児の難聴対策が緊急性を要すると判断。難聴児の保護者に十分な情報を提供できる体制をつくるよう、近く政府に申し入れる方針だ。

 

 

【ことば】 

人工内耳=音声を電気信号に変換し、電極を通じて脳の言語中枢に伝えて聴覚を補助する器具。手術が必要。空気の振動で伝える補聴器とは異なる。人工内耳の効果には個人差があり、手術後も定期的な通院が必要となる。

 

 

 

 

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