「未来を開く第一歩に」 母子支援施設と福祉事務所の職員が共同研修会

2019年0725 福祉新聞編集部
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大阪、東京、福岡、大分から約50人が参加した

 全国のさきがけを目指した「母子生活支援施設職員と福祉事務所等職員との共同研修会」が7月8日、大阪府社会福祉会館で開かれた。「母子の未来を開く第一歩は、施設と行政が顔の見える関係になること」。大阪、東京、福岡、大分から参加した約50人はそんな思いを共有し、新たな一歩を踏み出した。

 

 主催は、大阪府社会福祉協議会・母子施設部会。開会のあいさつで荒井惠一・部会長は、ひとり親世帯で親が就業している場合の日本の相対的貧困率は、54・6%にのぼり、OECD加盟国の中で最悪と指摘。「大阪の母子世帯は6万世帯だが、施設数から見ると、0・5%の300世帯しか受け入れられない」とし、「それなのに施設の利用率は80%と低く、全国的に見ても、暫定定員(定員割れ)の施設が35%を超えている。全国の課題だ」と訴えた。

 

 研修会の第1部では、2017年12月に部会内で結成された施設職員7人による大阪魁プロジェクトチームの活動報告が行われた。

 

 チームは、近畿母子生活支援施設協議会が17年6月にまとめた「入所時対応に焦点化したアンケート調査報告書」を読み込んだ。

 

 「適切な入所を促すカギは、福祉事務所の窓口職員と現場の施設職員のつながりにある」「窓口職員への協力や情報提供が不足している」「『サポートが必要』と判断した母子のうち、3割が入所を決めていない」……アンケートで浮かんだこんな事実を踏まえて、府内68カ所の福祉事務所を訪れて情報交換。パイプの強化のために初の共同研修会を企画した――と1年半の歩みを報告した。

 

 研修会の第2部は、グループワーク。大阪市立大大学院生活科学研究科の中島尚美・特任准教授をファシリテーターに迎えて、入所を躊躇している相談者にどのような声掛けや情報提供を行うか、などについて議論を深めた。

 

 中島准教授は、「顔の見える関係がカギ。どういうふうに自立支援計画を立てているのか…入所後も、リアルタイムでお互い(施設と行政)が知っている、伝え合っている、それが大切だ。退所後の切れ目のない支援や地域との連携にもつながる。その意味で、今日は大きな第一歩を踏み出したのではないか」と講評した。

 

【視点】未来の砦たれ 

 

 大阪での取り組みは、さきがけになる「必然的な要素」をはらんでいる。DVや虐待、貧困の連鎖などが深刻化し、命を失う悲劇が後を絶たないからだ。

 

 そもそも、「等身大の母子生活支援施設」を伝えきれていない。入所も退所も母親との「契約」で決まる。契約内容をきちんと説明し、受けられるサービスを丁寧に伝えることから、支援が始まる。国を挙げての啓発が急がれる。

 

 少子化を国難と認識し、だれもが活躍できる社会を目指すなら、措置費の改善は急務だ。財政が厳しいからと、入所をDVに限定している自治体さえある。

 

 母子生活支援施設は、生き直しの場でもあり、希望の砦だ。その数が、こんな時期に、なぜ、漸減しているのか。母子の悲鳴が聞こえてくる。

 

 

 

 

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