スマホ使って業務の効率UP 職員間連絡やケア記録もアプリで(福祉楽団)

2019年0806 福祉新聞編集部
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 千葉県の社会福祉法人福祉楽団(飯田大輔理事長)は、スマートフォンを活用した業務効率化に取り組んでいる。職員間の連絡やケアの記録もアプリを利用。ICT(情報通信技術)化に向けて、専門職員も雇用した。実際に活用する現場を訪ね、導入の効果について聞いた。

 

 「夜勤リーダーから連絡します」--。

 

 福祉楽団が運営する特別養護老人ホーム「杜の家なりた」では、午後9時と午前5時の申し送りをスマホのアプリ「Aldio Enterprise」(アルディオ・エンタープライズ)の音声通話で行う。

 

 常に職員はスマホを携帯し、無線のイヤホンを装着。アルディオを起動し、画面の大きなボタンを押しながら話せば、全員に声が届く。範囲を指定したグループ通話や、個人通話もできる。

 

 アルディオは(株)シアンス・アールが開発した製品で、利用料は1台月600円から。話す内容は自動ですぐにテキスト化され、英語やベトナム語など14カ国語に翻訳できるのも特長だ。音声も含めてデータが保存されるため、聞き漏らしもない。 生活相談員の中村麻里さんは「一番使うアプリ。もはやアルディオなしでの業務は考えられない」と話す。

 

相談員の中村さん

 

 導入の理由は、利用者の安全をどう守るかを考えた結果だった。

 

 杜の家なりたは、利用者の意思を尊重する介護を重視していることから、フロアや玄関に鍵を掛けない。ところが平均要介護度が3・6と比較的元気な利用者が多いため、「散歩に出る利用者の情報は、すぐに職員間で所在を共有する必要がある」(中村さん)。

 

 以前、利用者が居室で倒れた際、発見した職員がアルディオで勤務中の職員に一斉アナウンスし、すぐに看護師が駆け付けたことも。中村さんがスタッフルームから指示したり、救急車を手配したりした結果、利用者は一命を取り留めた。

 

 「結果的にアルディオは少ない人数で効率的かつ安全な運営につながる。スタッフ間のコミュニケーションも増えた」と中村さんはメリットを強調する。

 

 また、福祉楽団は利用者のケア記録もスマホで完結する。

 

 ケアコラボ(株)が提供するアプリ「ケアコラボ」は、利用者ごとにプロフィルを登録。日々の記録を文章や写真、動画で残すことができ、分かりやすいデザインなのが特徴だ。食事や水分量、排せつなど指定の情報は家族と共有する。

 

 月額利用料は1台当たり800円。家族が日々の記録にコメントしたり、利用者のこれまでの人生を写真や文章でまとめたりする機能も好評だ。「ご家族とのやりとりは職員の意欲向上につながりやすい」(ケアコラボ)。

 

 もともと現場のニーズをベースに開発した経緯があり、2015年のリリース以降、250回以上の改善を繰り返したという。

 

 

 

スマホには業務に必要なアプリが入っている

 

 このほか福祉楽団では、マットレス下のセンサーで心拍数などを測定し利用者の状態を把握する「眠りSCAN」や、勤怠管理の「サイボウズ」、社内チャット「スラック」など複数のアプリを活用している。

 

 こうしたICT化に向けて福祉楽団は専任の職員を配置。総務部ICT推進チームの平野源さんは、アプリの開発事業者との打ち合わせや、施設内の環境設定を中心に行う。

 

 ICT化に向けては費用対効果を求められているわけではないという。しかし、平野さんは「就職活動中の若手人材の食いつきが全然違う」と意外なメリットを口にする。

 

 もちろん導入したものの、廃止を検討するサービスも中にはある。「介護の現場へのICT導入は、分かりやすいデザインで、職員の満足度をいかに上げられるかが鍵だ」と話す。

 

平野さん(左)と中村さん

 

 

 

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