乳児院を多機能化 全国乳児福祉協議会が「総合支援センター」を提案

2019年1007 福祉新聞編集部
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意識改革を呼び掛けた平田会長

 全国乳児福祉協議会(平田ルリ子会長)は9月26日、京都市内で開かれた第69回全国乳児院協議会で、従来から持つ乳児院の機能に加えて、地域にいる虐待リスクの高い家族の支援などを前面に打ち出した報告書を発表した。乳児院が持つさまざまな機能を整理した上で、すべてを統括する「センター拠点機能」を追加。名称も乳幼児総合支援センターに改める。児童福祉施設の多機能化が求められる中、自ら具体像を打ち出すことで、今後の社会的養育の議論をリードしたい考えもあるという。

 

 報告書は、全乳協の検討会が2018年12月から6回議論してまとめた。増沢高・子どもの虹情報研修センター研究部長が委員長を務め、委員には平田会長ら全乳協幹部のほか、複数の自治体で里親を支えるフォスタリング機関を担うNPO法人キーアセットの渡邊守ディレクターも就いた。

 

 報告書によると、新たな乳幼児総合支援センターはこれまでと同様、障害児などへの「小規模養育支援」、緊急に保護する「一時保護」、病虚弱児などへの「小規模養育支援」、親子をアセスメントする「親子関係構築支援」、通所で支援する「アフターケア」に加え、新たに次の3機能を追加した。

 

 一つは、社会的養護に至る前段階から家族を支援する「要保護児童等予防的支援」だ。児童虐待の原因には、親の精神疾患などもあることから、段階的に親子に寄り添うことで信頼関係を構築し、必要な時に助けを求められる受援力を養う。児童相談所や市区町村とも連携し、家族機能の回復を目指す。

 

 また、里親のリクルートや研修などを一貫して支える「フォスタリング」も位置付ける。現在、措置解除されずに乳児院を退所した子どものうち、4分の1が里親に委託されているなど、既に実績もある。これまでの実践を拡充すれば十分担えると判断した。

 

 その上で、こうしたさまざまな機能をマネジメントする「センター拠点」としての機能を打ち出した。支援が必要な親子の課題を整理した上で、支援方針を設定。児相や市区町村など多機関と連携し、支援する体制もつくる。

 

 一方、報告書は乳幼児総合支援センターの機能を高めるには職員の処遇改善は欠かせないと指摘。子ども1人当たり職員3人の配置が必要と訴えた。

 

 さらに、現在、社会的養育の予算は、国が2分の1を負担する補助事業であるため、都道府県が予算措置しなければ、乳児院が多機能化に取り組む意思があっても実現できない構造を問題視。単年度の補助金では職員の育成見通しも立たないとして、支出が国の指示で強制される「義務的経費」に変更するよう求めている。

 

 

背景に大きな危機感

 

 全乳協がこうした報告書をまとめた背景には、乳児院の存在自体が脅かされているという強い危機感がある。

 

 17年に厚労省の検討会がまとめた「新しい社会的養育ビジョン」では、原則として就学前の子どもの措置入所停止が打ち出された。このビジョンについて報告書は、「現実的とは言い難く、大きな衝撃を与えた」と振り返っている。増沢委員長も「乳児院排除論は、世間から乳児院の機能が見えていないためだ」と話す。

 

 児童虐待など全国の児相への相談件数は18年に16万件と10年前の約4倍に増加。一方、要保護児童数はこの間、約4万人程度でほぼ横ばいとなっている。

 

 こうしたことから、大会で平田会長は「地域には支援の行き届いていない子どもが潜在化しており、地域での社会的養育体制の整備が緊急的な課題だ」と強調。国が打ち出す地域共生社会の理念を踏まえると、児童福祉施設への措置入所の積極的な活用と、地域の子育てニーズに向き合うことが期待されているとして「乳児院も自ら意識改革することが必要」と呼び掛けた。

 

 このほか大会では、新名称について提案したところ、会場から賛同の拍手が起こった。全乳協は今後、報告書を国会議員に対して報告するほか、現在、各都道府県が今年度中に策定する社会的養育推進計画の議論でも活用してもらう方針だ。

 

 

 

 

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