地域共生社会へ「交流」と「参加」の機会を創出 市町村の新事業 骨子〈厚労省〉

2019年1126 福祉新聞編集部
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 厚生労働省は11月18日、地域共生社会の構築に向けた、市町村による新たな事業の骨子を明らかにした。「断らない相談支援」「参加支援」「地域づくり」の三つを一体的に実施できるよう交付金を設ける。住民の交流や参加の機会を創出する「地域づくり」については、福祉以外の政策領域との連携重視を明確に打ち出した。新事業は社会福祉法に市町村の任意事業として位置付ける方針。2020年の通常国会に改正法案を提出する。

 

 新事業の骨子は、同日の「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」(座長=宮本太郎・中央大教授)に、最終報告の素案として示した。12月10日の次回会合で最終報告をまとめる。

 

 新事業は、18年4月施行の改正社会福祉法が、市町村の努力義務とした「包括的な支援体制の構築」(第106条の3)を後押しするもの。複合的な生活課題を抱えながら、制度のはざまに埋もれがちな人や家庭を把握することが主な狙いだ。

 

 そのため、相談支援体制は「多機関連携」と、つながり続けることを目指す「伴走型支援」を強化する。既存の相談支援事業を再編し、横断的に漏らさず対応できるようにすることから「断らない相談支援」と呼ぶ。

 

 「参加支援」は、就労、住まい、学習など多様な形の社会参加を促すもの。既存制度に該当するメニューがない場合は、生活困窮者自立支援制度の任意事業に位置付ける。

 

 新事業のうち市町村の総合力が最も問われそうなのが、「地域づくり」だ。住民同士の助け合い活動の呼び水となる「交流」や「参加」を活性化することが柱だ。そのための居場所の確保や、コーディネート機能が重要になる。

 

 「交流」や「参加」は福祉の枠にとどまるものではないため、同日の素案は「他の政策領域において、親和性の高い理念を掲げて進められている施策と連携を図ることが重要」と明記した。

 

文化芸術と親和性 「出会い」が価値生む

 

 「交流」や「参加」を促す考え方は、障害者文化芸術活動推進法に基づいて、文部科学省・厚労省が今年3月に策定した基本計画と親和性が高い。

 

 同計画は「文化芸術活動は多様な人々の出会いの場を創出し、その交流を通じて新たな発想、気付き、価値が創出される」とした。

 

 その実例と言える「合同文化祭」が11月9日、横浜市内で開かれた。精神障害者ら14人が手品、三線さんしん、ダンス、詩の朗読などをそれぞれ披露。普段は異なる法人の障害福祉サービス事業所に通う人たちが、企画を練って集う「ありそうだけどなかった文化祭」(参加者)だ。

 

AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」に合わせて踊った(右端に立つのが濱田さん)

 

 発案したのは、精神障害者が通う地域活動支援センター工房四季(同市泉区)施設長の濱田唯さん。「職員だけで利用者の回復を支えるには限界がある。いろいろな人と接する機会を増やすことで可能性を広げたかった」と狙いを語る。

 

 成果は少なからずあった。ピアノを演奏した菊地愛菜さん(29・就労継続支援B型事業所ゆめが丘DCに通所)は、「演奏を聴いてもらえたことだけでなく、他法人の利用者と知り合えたのが大きな収穫」と話す。

 

 障害のある当事者同士が支えあう「ピアサポート」に関心を持ち、自身にとって初の就職を目指し、「就労関係の情報を得るには人と出会うことが大切だ」と意欲を見せる。年内には就労移行支援事業所に移る予定だ。

 

 濱田さんは「普段おとなしい人が、打ち合わせの時に意見を述べてくれて驚いた。他事業所の障害者の姿を見て刺激を受け、一歩踏み出せたのかも」と手応えを感じている。

 

 障害者の文化芸術活動をめぐっては、国の基本計画に基づいて地方公共団体が計画を作ることが努力義務になっているが、策定済み・策定中の自治体はごく一部にとどまる。

 

 厚労省は「2020年度にも障害当事者、障害福祉事業所を対象に、文化芸術活動の取り組み状況を全国規模で調査する予定」(障害保健福祉部自立支援振興室)という。

 

 

 

 

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