「地域と共に復興だ!」 台風19号で水没した施設のその後(長野市)

2019年1128 福祉新聞編集部
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浸水した備品が積み上がる豊野事業所の駐車場で清掃活動に当たる職員(11月7日撮影)

 台風19号による千曲川の氾濫で1階が水没した長野市豊野町の社会福祉法人賛育会豊野事業所。被災から1カ月がたった今も、大半の事業が停止している状況だ。介護報酬などの収入が途絶え、本来の介護業務に従事できない職員があふれる中、地域貢献活動などにも尽力している。

 

 同事業所は病院と高齢者施設の複合施設、グループホームの2拠点で構成し、およそ10事業を展開している。10月の台風19号で1階の天井近く約2メートル30センチまで水が達した。年1回の水防訓練が功を奏し、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで暮らしていた約280人は垂直避難で全員が無事だった。

 

 ただ、今も復旧を急ぐ防災、給湯設備などの施設機能に加え、多くの備品が失われた。事業所の駐車場には今も、泥だらけのパソコンやプリンター、ソファーなどが山積みだ。被害総額は約16億円を見込む。国の補助金を活用するほか、大半は福祉医療機構などからの借り入れで賄う方針だ。

 

 訪問事業やケアマネジャー、病院の仮診察はスタートしているが、入所事業を中心に大半の事業が停止状態。入所利用者は市内の別の特養や老健などに移り、介護報酬などが11月から途絶えている現状も経営に追い打ちを掛ける。

 

 正規、非正規を合わせた職員約300人のうち100人以上は介護など本来の仕事に従事できていない。職員には通常通り給与が支払われている。

 

 このような状況の中、あえて重点を置いたのが「地域貢献」だ。「事業所だけを再建すればいい、ということではない。地域と一緒に復興しなければ意味がない。職員は地域貢献活動を展開しています」と、特養「豊野清風園」の森佐知子施設長は力を込める。

 

 従来業務を担えていない職員たちは平日、地域の被災者宅に出向き、泥出しや荷物の運搬などを手伝う活動に奮闘している。延べ約600人が参加した。何気ない会話から生活ニーズや福祉課題をくみ取る狙いもある。

 

 また、地域の子どもや高齢者が食事をしながら交流する「とよのスマイル幸腹食堂」の経験を生かし、自主避難している近隣の公民館に出向き、定期的に炊き出しもしている。

 

 地域貢献以外では、他法人の施設に出向し、活躍している職員もいる。同事業所の介護職員ら約40人は、利用者を受け入れてもらっている市内の特養や老健など10カ所に行く。

 

 出向に当たっては、受け入れ先の各法人と「覚書」を交わし、▷(受け入れ先の)勤務体系に従う▷賛育会の介護、看護職の平均賃金を請求する――ことなどを確認した。

 

 森施設長は「賛育会のいいところを大切にしつつ、他法人からいろいろ学べるチャンス。職員の成長にもつながる」と前向きだ。事業再開までの雇用創出策として、賛育会内の他施設への出向も検討している。

 

 12月中旬から、浸水を免れた2階以上の入所事業(特養、老健、軽費老人ホーム)を利用していた約180人の受け入れを順次再開する予定だ。それに伴いおよそ8割の職員が本来業務に復帰できる見通しだ。

 

 森施設長は「利用者に落ち着いた生活を送ってもらえるよう、(利用者の)家族、行政、受け入れ先法人としっかり調整しながら、円滑な受け入れを進めたい」と意気込む。

 

 事業が本格復旧しても、高齢者サロンの開催など地域貢献活動は継続していくつもりだ。「地域の復興なくして事業所の復興はない」(森施設長)と、あくまで地域と共に復興する姿勢を貫く。

 

 

 

 

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